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がんだまぁBlog
ガンダムネタだけを語るブログです。
グリプス戦役という名の「学園闘争」
 宇宙世紀の歴史の中でも、グリプス戦役は際立って「指導者が若い」時代であったように思います。ザビ家の設定年齢が低すぎることはとりあえず置いておいて、シャア、シロッコ、ハマーンは皆20代でありながら、軍組織を指揮し世界の趨勢を握っていました。これは実社会に置き換えると、ベンチャー企業の社長のようなかなり若い人間が経済のトップに立っている状態であったように思います。
 では若い人間が中年以上の大人を自在のコントロールしていたのか、と考えると、実際はそうでもないんじゃないかという気がしてきました。アクシズは新兵が大半でしたし、ティターンズも若い兵士が多く、エゥーゴはカミーユやルーのような未成年を主力パイロットにしている有様です。
 実はグリプス戦役は平均年齢が若い、学園闘争のような争いだったのではないか…という切り口で考察してみたいと思います。


 まず最初に、平均年齢が若いと言っても、ティターンズの生みの親・ジャミトフは当然高齢ですし、エゥーゴの中心人物であるブレックスやメラニーも高齢です。アクシズにも、マハラジャ・カーンがいたように高齢な幹部が全くいなかったわけではないでしょう(シャアのネオジオンには実際にいましたし)。
 そのため、グリプス戦役の発端が年寄りによって引き起こされたことには間違いありません。しかし世界の趨勢が混迷としていく中で、次第に若い指導者に主導権が移っていったことは確かです。その過程を各軍から考察してみます。


 まずアクシズは、少なくともグワダンに配備された先遣隊は、ハマーンのキュベレイ以外の艦載機がすべてガザCであり、練度も低かったことから、ほぼ新兵しかいなかったと推測されます。アクシズにどれだけの「大人」がいたかはわかりませんが、アクシズの新兵たちはハマーンという若い女性が十分支配できるレベルの層であったと言えます。
 そして、このような若い指揮官と新兵しかいないような部隊が成立していたこと自体、アクシズが駒不足であったことは確かでしょう。ラカンのような一年戦争の生き残りは非常に少なかったのではないでしょうか。後付けでデラーズ・フリートの生き残りが参加したことにもなりましたが、一年戦争の時点でシャアのような若きエースが指揮官にならないといけなかった台所事情でしたから、元から「大人」と言える年齢の軍人はかなり少なそうです。「ZZ」でもラカン、マシュマー、グレミーと名ありのパイロットはみなエンドラ級の指揮官になっていましたし。
 一年戦争終結時の状況を考えると、宇宙のジオン残党は地球に残ったジオン残党のようにゲリラ化するには環境が過酷すぎる(空気や水が限られる)ため、家庭をもつような年齢の軍人ほど安定した生活を望み、ジオン共和国に帰った人間が大多数であったのではないかと思います。タカ派はデラーズ・フリートに集まり、戦犯が免れられそうにないザビ家に近しい人間たちと、帰るところのない孤児のような若者たちだけが、アクシズに逃げていったとも考えられます。アクシズの人間たちにとって、地球帰還は「帰る場所を探すための戦い」だったのかもしれません。

 一方、ティターンズは「地球出身のエリート」で固められた部隊ですが、ベテランの人間はあまり多くありませんでした。ガンダムMk-IIのパイロットに選ばれていたジェリド・カクリコン・エマの3人も、一年戦争未経験の若いパイロットです。
 エゥーゴとの本格的な衝突が始まってから、ライラ・ブラン・ヤザンなど地球出身と関係ない(と思われる)パイロットを補強しているあたり、元々はそこまで本格的な実戦を想定していない、対ゲリラが主目的のプロパガンダ色が強い部隊だったのではないかと思います。ジャミトフが政治的に優位に立ち回るために、地球至上主義者の支持を得るために作ったハリボテの部隊だった可能性さえあります。
 連邦軍の上部組織にしたかったあたり、どちらかというと将来の幹部候補となる、官僚色の濃いメンツを集めていたのかもしれません。一年戦争時点でのブライトのような人材ですね。まぁ、ジェリドは典型的な田舎のアメリカンヤンキーみたいでしたけど、そこから成りあがってやろうという強い野心を持っていました。
 地球出身のエリートであれば一年戦争当時も割と安全な場所でぬくぬくしていた若者たちでしょうから、ティターンズは経験が浅いけど生活レベルが高くプライドがある人間を集めた集団であったと言え、緊急時の即応性が低くその点が足かせになったのだと考えられます。そんなメンバーだからこそ、シロッコのようなガチで有能な若者であれば簡単に乗っ取ることができたのでしょう。

 そしてエゥーゴは、そんなティターンズが連邦軍内で権益を拡大することをよしとしない集団であり、ティターンズがスペースノイドに攻撃的であることに対する反感が作り出した組織です。その総数ははっきり設定されていないと思うのですが、ジャブローを攻めた部隊から察するに、シャアに賛同して集まった連邦軍兵士と元ジオン軍兵士がメインであったように思います。
 モデルが学生運動なので、おそらくは30バンチ事件などのティターンズの悪行への反感やジオン・ズム・ダイクンの思想などを根底に、現在の社会情勢を良しとしないスペースノイドの若者たちが中心のメンバーであったと考えることができます。
 ただ学生運動との違いとして、政治的な組織よりも商業的な組織(アナハイム)による支援が強かったことが挙げられます。そのため、ティターンズとの関係は政治的な対立よりも経済的な対立としての側面の方が大きく、ある程度同じ思想(スペースノイドの権利優先主義)というくくりはあったでしょうが、どちらかというと経済力で集められた傭兵集団的な性格が強かったのかもしれません。連邦・ジオンの垣根を超えた人材が参加していることから、立場を超えた非正規武装組織だったのは間違いないです。


 このように考えると、「政治的事情でかき集められたエリートボンボンの集団」であるティターンズに対し、「政治的に不遇な立場に置かれているが経済の力で一発逆転を狙うハングリーな若者層」であるエゥーゴが攻撃をしかける中、「前大戦で居場所を失った敗戦国の生き残り集団」であるアクシズが割って入っていくというのがグリプス戦役であったと考えることができます。
 これを日本の現代社会に例えると、ティターンズは「強力な政権与党が作った、各地方自治体に対し強大な権限を有して地方を引っ掻き回す若いエリート官僚チーム」、エゥーゴは「政治的な圧力を跳ねのけて、より良いことをやろうという意欲を持った経歴バラバラの若者の集団」、アクシズは「過去に大きな事件を起こした宗教団体の後を継ぐ、身寄りのない若者の集団」ということになるでしょうか。
 たまたまいけ好かない若い官僚(ジェリド)に悪態をついたら、政治力で無理矢理逮捕されそうになったのでガンダムに乗って脱出したのがカミーユ、それを助けた代わりに自分たちの活動に参加させるのがシャア、双方手詰まりのところを両者の間に入ってパワーバランスを崩しにかかったのがハマーン、官僚たちが無能なので自分で指揮を執って自分に都合よく政治力を行使しようとしているのがシロッコということになります。
 結局官僚たちが非合法な手段を使っているのがばれて失脚し、政権野党が権益を拡大して反ティターンズ運動に協力した公務員は昇進したものの、一般人はお役御免となり、一部は後のシャアのネオジオンに参加…というところでしょうか。

 エゥーゴが学生運動に近い組織であるのに対し、ティターンズは学生運動における体制側(警察)というよりも、もう少し若く経験の浅い層をイメージしており、またアクシズという現実には存在しないガンダム世界独自の組織がアクセントとなって単なる現実の写し鏡にならない世界観を構築していると言えそうです。
 ただいずれにせよ、ジャミトフが利用しようとした「若いエリート層」と、アクシズに集まった「戦争で居場所を失った若者層」は、どちらも「一年戦争をちゃんと知らない若者たち」であったように思います。前者は甘い汁を吸うだけ吸って楽な立場でありたいと思い、後者は絶望的な状況から少しでも逃れようともがこうとしていました。それに対し、エゥーゴはそんな若者たちに自分の未来を好きなようにコントロールされたくないという意志を持った集団であり、どちらかというと現実を知っている、地に足がついた若者たちだったのかなと思います。「こいつらに任せていたら自分の将来が危ういぞ」という危機感から行動を起こし始めた集団と言えるでしょうか。
 ある意味では、戦後の混沌とした状況下で、自分の所属する立場の中で若者たちが少しでも自分の状況を好転させようともがくのが、一つの「Zガンダム」の物語であったのかもしれず、発端は年寄りであったとしても、そういう若い世代のもがくエネルギーが年寄りの思い通りにさせず、違う方向に時代を動かした、という世界観だったんじゃないかなと思ったりしました。だから「新しい時代を造るのは老人ではない」という台詞も出てきたのかなと。ただ、結局どうもがいても自分の思い描く未来はやってきそうにないと絶望したのがシャアであり、いや頑張ればどうにかなるもんだぞと思ったのがアムロであり、その狭間で自分が何をしたいのか見失って自暴自棄になった(新訳ではそれでも隣に愛する異性がいればいいんだと気づけた)のがカミーユだったのかなぁという気がします。
 ファーストガンダムが十五少年漂流記をモチーフとした、少年たちの集団の成長物語だったのであれば、Zガンダムは各組織に分かれた若者たちがそれぞれの立場で混沌の時代でもがく群像劇であったのかもしれません。
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コメント
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エゥーゴについて
こんにちは。
興味深い記事です。
ティターンズは俺も完全に同意です。政治的な理由で担ぎ上げられたエリート若造集団、現実で言うと選挙で与党に担ぎ出された若手県庁職員みたいなものでしょう。当人達はそれなりに志があったと思ってます。
アクシズに関しても、戦争で行き場を失った若者(厳密に言うと、行き場を失った者達の次世代でしょう)が積極的に前線に出ていたのだと思います。

しかし、エゥーゴに関しては、他の2組織ほど一枚岩になっていなかったのではないかと考えてます。純粋な反連邦・反ティターンズが多かったかもしれませんが、私が見たところ、アナハイムに近いためジオン残党にいて星の屑に参加しなかった連中や、アナハイム関連の人間も少なくないように感じました。反連邦であっても、では親何なのか?と考えると、かなり怪しいように思います。制服の色や着こなしに幅があったり、ワンオフのモビルスーツが目立つところも、まとまりのなさを感じていました。
指導者ブレックスのようなティターンズに対する抑制力として組織されていることに本当に賛同している者がどれだけいたんだろうか?と思うのですが、それでもそれなりの組織行動ができていたのは皮肉ですが俺らの影響力の大きさ故なんだろうなと思います。

また覗きにきます。
2020/03/26 (木) 19:03:44 | URL | ジェリド #HaKu8Xss[ 編集 ]
確かに、ティターンズやアクシズに比べてエゥーゴは組織としてのまとまりは弱い可能性がありますね。
元々反ティターンズという旗印だけで集まった集団なので、ティターンズがなくなればそれぞれ別の場所に戻っていく人達なんでしょうね。

シャアのような「非合法手段で軍籍を得た、本当は連邦軍人じゃない人」の扱いが良く分からないことがエゥーゴの分かりにくさに直結しているような気がします。
2020/03/28 (土) 16:12:31 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
面白い考察でした。

一年戦争から続いた変革を望む若者達が起こすゴタゴタを尻目に、ゴップが政治の中枢に居残っているところなんかに、結局はオールドタイプが支配側であり続ける狡猾で残酷な実利世界の諸行無常を感じます。

そりゃ、50年もしたらニュータイプって何?ってなるわな。
2020/04/03 (金) 16:23:31 | URL | #-[ 編集 ]
ジョニ帰はゴップを便利に使いすぎ、という気もするんですが、まぁZ~ZZで中央政府や正規軍中枢の姿ほとんど見えてこない、というのはほとんど関わってないから、ということだと思っています。
基本的には局地戦の物語なんですよね。
2020/04/11 (土) 23:11:25 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
ブライトの原案
初めて投稿します。
六本木ヒルズでのガンダム展を見た時にファーストのキャラクター原案がありました。
ブライトの当初案・デザインと共に「金髪・碧眼、額が広い、狭量で人を見下す」と文があり、誰かに似ていると思ったら、Zのジェリド…?
案外、ジェリドのイメージはWBでの苦労や経験がなかった場合のブライトなのかも…と思った事がありました。
失礼します。
2020/04/12 (日) 20:51:20 | URL | 匿名 #-[ 編集 ]
ティターンズが意図的に若者中心の編成部隊だったと言う解釈には、自分は疑問を感じます。

飽くまでもZ本編に於いて、ジェリドやカクリコン等の戦後世代が目立つだけではないかと。
実際、発足時にはアルビオンクルー等のベテラン軍人を入隊させている描写がありました。

つまり、ティターンズ発足時にベテランを積極登用したが、組織拡大に伴い若手の補充が急務になったと。
また、地球出身者に限ったのは後半のみだと考えます。エゥーゴのスパイを警戒した場合、生まれや身元がよりはっきりとしたアースノイドを採用した方が安全だと考えたのではないでしょうか?

では何故、映像に若者が多いのかと言えば、
単純に一年戦争で現役世代が死に過ぎたのが原因だと思われます。
これは軍隊に限らず民間組織も同様でしょう。

つまりベテランが少ないのはアクシズに限らず、
この時代の地球圏全体だったのではないかと考察します。
ジュドーみたいな家庭環境は、あの時代珍しくない光景だったのかも知れませんね。

2020/04/22 (水) 17:16:18 | URL | にゃん #-[ 編集 ]
>匿名さん
確かにブライトの初期案は金髪でしたね。
なんというか、「典型的なアメリカンヤンキー」みたいなデザインがメジャーだった時代なのもしれません。ヤザンもそういう造形ですし。

>にゃんさん
少なくともZ放映時点での富野監督の頭の中では、ティターンズは「戦闘経験の薄い部隊」という描き方であったように思います。
エリートを配備した部隊なのではなく、地球出身者だからエリート部隊だという認識だったのが、いつの間にか歴戦のエリートを集めた部隊というイメージに変わっていったのが0083以降なのかなと。

経験のあるエリートが少なく、その後は若い地球出身者を登用せざるを得なかったという事情は間違いなくあると思います。
生き残った現役世代も、姑息な手段で逃げ延びた者が多く、本当に優秀な人間は少なかったのかもしれませんね。
2020/05/02 (土) 16:16:30 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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