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がんだまぁBlog
ガンダムネタだけを語るブログです。
ガンダムWの世界の軍事組織について考える
 ガンダムWの斬新なところは「主人公がテロリスト」だということに加え、「生身の兵士とモビルドールの対立」を描いたことだと以前書きましたが、それに加えてもう一つ斬新な点があります。それがOZという存在です。OZは「秘密結社」と説明されているように、特定国家の軍事組織ではありません。あくまでも民間組織です。この世界で何が起きているかというと、「軍事力のアウトソーシング」ということになります。このことを踏まえて、ガンダムWの世界の軍事組織がどのようになっていたのか、少し考察してみたいと思います。


 まず「OZ」とは何かと言う事が、実は作中でも設定資料でもあまり深く説明されていないのですが、これはティターンズのような地球軍の特殊部隊、上位組織というわけではありません。ロームフェラ財団の支援でMSを開発し、連合軍へ兵器と人員を供給する民間軍事会社の一種です。連合軍内でも「スペシャルズ」という部隊で実戦参加していたものの、基本的に各国家軍とは別組織でした。
 このOZの支援を受けて、軍事力を急拡大した連合軍は、武力を持ってコロニーの紛争を鎮圧し、支配するようになったわけです。これに対しコロニー側は、急進派が真のオペレーションメテオであるコロニー落としで地球ごと壊滅させようとするものの、5人の科学者がこれを回避するためにガンダムだけを独断で投入した、というのが作中のオペレーションメテオです。
 このオペレーションメテオの目的は「OZの殲滅」であり、OZが拠点としている軍事施設のみが襲われています。ガンダムパイロットとその背後の5人の科学者は、連合の軍事力拡大を招いているのはOZであるという認識から、OZのみを標的としていました。

 実際、連合軍自体は軍縮に傾いており、すでにほぼ地球圏は統一されていることから、軍事力削減の動きを見せていました。これを良しとしないロームフェラとトレーズ率いるOZは、ガンダムに偽の情報を流し、この軍縮を推進している一派を根こそぎ殺害する事に成功した上で、各地で連合軍への叛乱を起こします。これがオペレーション・デイブレイクです。

 OZはコロニーを人質に取りガンダムに降伏を迫りますが、これを拒否したWガンダムは自爆し、その後コロニーはOZの要求を受け入れ、ガンダムパイロットは当初の任務を終了する事になりました。
 この後、世界はOZ対連合軍の戦闘状態に入ります。それぞれの地球国家が持っている軍事力を全てOZのものとし、OZだけが世界の軍事力になるというのがこの時点でのOZ・ロームフェラの目的です。それは各国にとっては、国防を捨てOZに全ての軍事力を依存するということになりますから、他の軍需の既得権益は全て失われますし、戦争をするもしないもOZの裁量次第ということになってしまいますから、都合は非常に悪いと言えます。一方で各国としては、一般人を徴兵する必要もなくなり、OZに払う以外の軍事予算を持たなくて良くなるという意味では良い面もあり、軍事力による国家間対立も不可能になることから一種の平和と呼べる状態にはなります。このせめぎ合いが、当面各国家間で続く事になります。
 また、OZは連合の圧政に苦しんでいたコロニーに対して懐柔策を取り、以前よりも状況は良くなるという保証をした上で各コロニーとの協力関係を築いています。

 軍事力では供給元のOZの方が圧倒的であり、更に新型MSトーラスとモビルドールを一方的に投入したことから戦力のバランスは決定的となり、世界は軍事的にはほぼOZの支配下に置かれるのは時間の問題という状態でした。しかし、OZも一枚岩ではなく、全てを決する前に内部から崩壊していく事になります。
 全ては総帥であるトレーズがモビルドールの全面採用に反対することから始まります。モビルドールの投入は兵士の削減を招き、これまで共に戦ってきた各兵士たちの存在価値を奪う事になることから、トレーズはその姿勢に反対します。しかしOZを実質的に支配するロームフェラ財団は方針に反対するトレーズをクビにしてしまいます。これを良しとしない多くのOZ兵士がトレーズ側につき反乱を起こすことで、世界はOZのトレーズ派(人間兵)対ロームフェラ派(モビルドール)の戦争へと移行します。更にまだOZに屈していなかった地球の各国家はサンクキングダムを中心にまとまりはじめ、OZへの抵抗を始めます。
 この地球の反OZ国家とトレーズ派という敵を一掃するため、ロームフェラ派のOZはモビルドールの量産と宇宙要塞リーブラの建造を強行、そのためにコロニーにも重い負担を強いたため、一度は得たコロニー側の信頼を失う事になります。それと引き換えに得た強大な武力により、オペレーション・ノヴァを決行、地球の各地にビルゴ部隊を降下させ、一気に反対勢力を制圧しにかかりました。これによりトレーズ派は勝ち目を失い、またサンクキングダムも降伏し、ロームフェラが支持する体制で世界国家の樹立を宣言する事になります。ほぼロームフェラによる世界の支配はここで達成されました。

 しかし、ここまでのロームフェラの強行的な手段が徐々に裏目に出始め、内部にも従わない者が増え始めてしまいます。そのためデルマイユはあえてリリーナを世界国家の代表に就かせることで傀儡としてコントロールしようとするのですが、逆にリリーナが反デルマイユの人間を集めて組織を乗っ取ってしまいます。デルマイユは暗殺され、また宇宙では不満がたまっていたコロニー側の一部がホワイトファングを名乗りOZ宇宙軍の装備を奪取して世界国家への対抗を宣言、今度はホワイトファング(コロニー)対世界国家(地球)の戦争状態になります。しかもホワイトファング側の代表にリリーナの兄であるミリアルドが就き、かつ交渉を拒否したことからリリーナの政権は頓挫し、トレーズが代わりに国家元首に就いて世界国家軍を率いる事になりました。
 結果は、世界国家軍が壊滅し降伏するも、ホワイトファングも元々持っていたOZの兵器のほぼ全てを喪失、幹部も死亡または行方不明となったため、両成敗的な結果で地球とコロニーが和平の道を探っていく事になります。

 このように、ガンダムWの物語は「ガンダム対OZ」「OZ対連合」「OZトレーズ派・反OZ国家対OZロームフェラ派」「世界国家対ホワイトファング」という対立図式に絶えず変化しています。その中心にいるのがOZで、これは「ロームフェラ財団による、OZを使った軍事力・財政力による世界支配」に世界がどう対処していくかという物語であったとも言えます。ガンダムの世界観はまず「地球連邦ありき」で、地球は基本統一されていることが多く、そうでなくとも既存国家は残っているものの地球側の軍隊は共通の敵と戦っていることが多いのですが、ガンダムWは「地球をどう統一していくか」の物語である点が珍しいです。
 特にロームフェラ財団という存在は異質で、設定的には「SEED DESTINY」のロゴスに似ていますが、直轄の軍事組織OZを持っている点が異なります。また地球統一の過程を描くという意味では「00」とも共通していますが、これはソレスタルビーイング=主人公側が旧国家の敵となることで成し得た統一で、悪役であるロームフェラとは位置づけが全く異なります。特定の財団が世界の軍需をコントロールしているという世界観はリアルであり、ロゴスのように安易な悪役と描かず、ソレスタルビーイングのような正義感があるわけでもなく、自己の利益のために統一を行おうとするものの、内部に対立や葛藤があってうまくコントロールできずに終わる、という点は現代社会にも通じる秀逸さがあると思います。「00」も王留美とか傍観者の皆さんを掘り下げればそういう方向に描かれた可能性はありますけどね。あれもキャラ重視路線に走ったという意味ではWと一緒ですね。

 このガンダムWの軍事的な世界観は、最初に武力で統一された、一応は平和な状態で、あとは軍事力をいかに削減していくかというところから物語が始まり、「いやいや軍事力が削減されたこっちは商売上がったりなんですけど」という人たちが暗躍して紛争が起きるところから展開していきます。
 最終的に軍事力のヒエラルキーの頂点に立つのはモビルドールなのですが、これは機械であるが故に、簡単にホワイトファングに乗っ取られてしまい、別の戦争を引き起こしてしまうというところも含めてリアルであったと思います。話し合いや、徴兵の回避だけでは平和は起きず、効率的な兵器は流用の危険を招くことから、やっぱり兵器そのものがない方がいいねということで全兵器の撤廃という結論に行き着くわけです。まぁ、兵器がなくなっても人間に争う意思がある限り戦争は起きるのですが、それは続編小説の話ですね(読んでないんですけどね…薦める人を見たことがない)。

 「ガンダムW」が特に斬新なのは、軍事力が国家の防衛のためだけにあるとは限らないという世界観を示していることです。ガンダム世界の軍事組織は、基本的に国家に属しているかテロ・ゲリラ組織的なものかのどちらかですが、そうではなく国家の軍事力を代替する組織がいる、という点が新しく、それが故に分かり難い設定にもなっていると言えます。現代においても、どの国でも戦争は嫌だ、徴兵は嫌だ、平和の方がいいと言いながら国家間のパワーバランスのために軍事力が必要、というジレンマを抱えていますが、これを解決する一つの策がOZであったとも言えます。そういう描かれ方はしていませんでしたが、軍事力が対立を招くなら全ての国の軍事力を共通にしてしまえばいいじゃないという発想であったと言えます。そこにロームフェラが一方的に利益を享受するという面があることが問題ではあるのですが、これも世界平和への一つの方法論だったのかもしれません。
 もちろん、軍事力を一箇所でコントロールするということは、そこにいる人間の裁量で世界がどうとでもなってしまうというリスクがあるわけで、そのあたりの描写があれば、もっと違う物語になっていたんだろうなとは思います。色々と1作で終わらせるにはもったいない世界観だったと思いますね。AGE以降、非宇宙世紀のガンダムは見ないようにしているのですが、Wの世界観に近い新ガンダムが作られたら、追いかけるかもしれません。

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国家から独立した軍事力が世界全体の平和を維持するという点では、鉄血のオルフェンズのギャラルホルンが近いといえば近いんですかね
あれは資金面を各国に依存してるので完全には切り離せてませんが(癒着もありましたし)
2018/09/25 (火) 08:32:49 | URL | サンイチガ #3/VKSDZ2[ 編集 ]
>しかし、OZも一枚岩ではなく、全てを決する前に内部から崩壊していく事になります。

敵対組織が途中、圧倒的勝利したにも関わらず、内紛で崩壊していく様を見てるとZZを連想します(ターンAも?)。

違うのはグレミーに思想的なものが全く感じられず、ハマーンから権力を奪うこと以外の目的が何も見えないことでしょうか。

Wは完全平和主義をはじめ思想家の印象が強いのですが、ZZは野心家が目立っていて、その分、生々しく感じる時があります。

>ガンダム世界の軍事組織は、基本的に国家に属しているかテロ・ゲリラ組織的なものかのどちらかですが、そうではなく国家の軍事力を代替する組織がいる、という点が新しく、それが故に分かり難い設定にもなっていると言えます

ガンダムではありませんが、「メタルギア」シリーズに登場するアウターヘブンという傭兵企業が近いかもしれません。

この組織は傭兵を輸出することで世界を支配することを目論んでいた組織です。

同時に戦士たちの為の世界を作り上げるという理想も抱いていたようで、ある意味、トレーズ離反前のOZに近かったのではないかと思います。

トップの出自、目指した方向性、世界状況がまるで違うので、比較にならないかもしれませんが……。
2018/10/01 (月) 13:39:30 | URL | ケイ #-[ 編集 ]
>サンイチガさん
>ケイさん
他作品には似たネタもありますよね。
そういう方向性を今後のガンダムでしっかり描いてみて欲しい気もします。

Wは本当はロームフェラとかかなり私欲で動いているはずなのですが、登場人物が理想家ばかりだったので生々しさが隠されていた印象があります。
Wの世界は少女マンガ的なオブラートで包まれていただけで、それを取り去ると割と他のガンダムやそれ以外の作品に近い生々しさがある世界があった可能性があって、そういう世界観に魅力を感じています。
2018/10/07 (日) 18:24:26 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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