がんだまぁBlog
ガンダムネタだけを語るブログです。
パプティマス・シロッコとフォンセ・カガチ
 以前の考察で、シロッコの目指した世界がその後カガチの行った政治に似ているのではないかということに触れ、しかもカガチが生まれた年はちょうどシロッコが死亡した0088年であったということに気づきました。
 このあたりから、シロッコとカガチとその背後にあった木星の勢力について、少し掘り下げてみようと思います。といっても、ほとんど設定がないので、大半が想像と推測と創作ですが。

 あまりこのブログではVガンダムの設定は扱ったことがないのですが、改めてフォンセ・カガチというキャラがどのような人間で、何を成そうとしていたのかを振り返ってみます。

 まず、カガチはザンスカール帝国を建国した首謀者です。特別な力をもつとされるマリア・ピァ・アーモニアを女王として利用して民衆の支持を集め、自らの政治団体「ガチ党」がサイド2のコロニーを牛耳り、ザンスカール帝国として連邦政府から独立させようとしていました。
 この頃の連邦政府は、コロニーに対して抑止力を働かせるだけの力を持っておらず、コロニーの自治運動をほとんど放置している状態であったため、ザンスカールはやりたいように軍備を揃えて地球に侵攻しました。
 しかし、ザンスカールの地球侵攻は全て囮であり、カガチの真の目的はエンジェル・ハイロゥによる地球人類の浄化であったことが明らかになります。それは事実上の地球に住む人々の抹殺であり、鉄仮面がバグで、クラックス・ドゥガチが核攻撃で行おうとしていたことと同じものでした。

 カガチは何故地球に住む人々を抹殺しようとしたのでしょうか。この時代の議会は月にありますから、シャアのように政治家を狙ったものではありませんでしたし、鉄仮面は単純に人口を減らすことが、ドゥガチは地球に住む人々への個人的な憎しみが動機となっていました。
 カガチの台詞として象徴的なのは、「増えすぎた人類こそ真理を踏み越えたのだ。そういう人類は消えたほうがよい」という言葉でしょうか。カガチにとって人類は死すべき存在であると思っているようです。ただしそのターゲットがコロニーの住民を含まない地球上の人間だけであるということを考えると、その考え方は「人類は地球を捨てて宇宙に巣立つべき」というジオン・ダイクン以来の思想の延長上にあるように思えます。また人類は地球に不要、という意味では「Gガンダム」のマスター・アジアの思想に似ているかもしれません。
 そのように考えるに至ったカガチのバックグラウンドは、全く設定されていません。木星帰りであるということがわかっているのみです。まぁ、ただ鉄仮面にしろドゥガチにしろ、女性に対してコンプレックスを持っていましたから、同じ冨野悪役であるカガチにも、同じような何かがあった可能性は推測できますが。


 そして、パプティマス・シロッコです。彼が目指したのは女性が支配する世界、マリアという女王を立てて宰相の立場で実権を握るカガチのポジションは、まさに目指すところであったように思えます。ではその世界で、シロッコは何を目指そうとしていたのでしょうか。
 これは個人的な推測でしかありませんが、シロッコには目指すものはなかったのではないかと思います。というのも、シロッコは企画の当初から、人工的に生み出された存在であることが示唆されているからです。おそらく彼は、「SEED」におけるコーディネイターのような存在だったんじゃないかと思います。非凡な才能とニュータイプ能力、そして木星船団の一員であったことなどから総合して、木星の環境に適応するために特別に生み出された人間だったのではないでしょうか。
 シロッコの役割は、木星船団の円滑な運用であったとします。しかし彼の優れた能力と頭脳は、それだけを仕事とするには余りあるものです。生きていくうちに様々なことを考え、こうすればもっと良くなるのではないか、ということを色々と思いついたのだと思います。しかし一方で、母を知らず、まともな家族関係を構築していないと思われるので、人間的なコミュニケーションはあまり得意ではありません。作中でも不躾な態度を頻繁に取っていますし、女性に対しても支配的な態度を取っています。心理学の専門家ならもっと詳細に分析できるのかもしれませんが、とりあえずまともな幼少期は送っていないように思えます。かといって虐待などの辛い体験を経ているわけでもなく、無機的に育てられたのかなと。そうなると、本来人間が必要とする承認欲求が満たされていないので、自己顕示欲が強い人間になるのではないでしょうか。
 とりあえずシロッコは、単純に与えられた職務と持っている能力にギャップがあり、その力をより発揮したいという欲求に突き動かされていたのではないかと思うのです。だから世界の支配を試みたのではないかと。その先に何かを求めていたからではなく、行けるところまで行ってやろうというだけだったのではないかということです。
 その結果、シロッコは介入しなくていい戦争に介入してかき乱し、実権を握ろうとしたところをカミーユというニュータイプに止められてしまったということになります。

 そして、カガチがシロッコの次に生み出された木星船団のための特別な人種だったとします。カガチは少なくとも50年くらいは全うに木星公社で生きてきたのだと思われますが、0145年にマリアと接触しザンスカール帝国の建国へと向かっていきます。どのくらいの時期からカガチがこの野望を持ち始めたかはわかりませんが、カガチの場合、自らの能力を発揮するためだけというには行動に移るタイミングが遅いため、それまでどのようなことを考えて目指していたかはよくわかりません。ただ分かっているのは、地球の人間に深く絶望しているということです。
 そもそも、カガチが木星にいたのであれば、少なくとも表向きは地球圏へヘリウム3を輸送するための仕事をしていたはずです。地球へエネルギーを供給する仕事は、当時の人類の生活に欠かせないものであるはずですから、本人がどう思っていたかはともかくとして、人類の役に立つ仕事をしていたことになります。しかし、その成果は何であったのでしょうか。
 当初、ヘリウム3が必要とされた背景は人類の宇宙移民のためであったはずです。コロニーの建設や稼働に核融合発電が不可欠で、そのための木星船団でした。ある程度の移民が終わると、あとは人類のコロニー生活の維持が目的となります。しかし、人類はコロニーと地球の間で戦争を始め、しかもその結果地球はコロニーの人々を締め付けるようになりました。これは徐々に解消され、宇宙の権威がだんだん上がっていきましたが、かといって連邦政府が次に何をするでもなく、地球環境も中途半端に放置されていました。憂う点があるとすれば、この部分でしょうか。
 地球とコロニーの緊張状態がなくなり、コロニーの市民権が向上した時代にあっても、人類は地球の環境を改善しようとしなかったのが宇宙世紀です。元々の宇宙移民が人口増加による地球の環境悪化を避けるためであったはずなのに、その地球をより良くするための行動を取らない、という点が一つあるのかなと思います。
 カガチは、シロッコのように道を踏み外さず人生を重ねました。しかし自分が尽力したところで、世界が良い方向にむかったわけではなかった、そう感じたのではないでしょうか。普通の人間であれば、目先の幸せを求めて生きていくことができますが、家族のいないカガチにはそれがなく、なまじ才覚があるばかりにただ世界の行く末を見据えて生き続けるしかなかった、その結果が0140年代の宇宙世紀であったというのが、カガチの絶望だったのではないかと思うのです。
 シャアの望んだ議会の宇宙移転は、すでに成されました。しかしそれとセットであったはずの地球環境の回復は実行されず、未だ地球に住んでいる人々が存在する。そのような状態に、カガチは絶望したのかもしれません。

 しかし、カガチは何故エンジェル・ハイロゥという手段を用いたのでしょうか。コロニー市民にはギロチンという残虐な手法を使う割に、地球の人々に対しては最も血を流さない方法を選択しています。一つ言えるのは、マリアという人間を使うことが前提であったということでしょう。マリアの力を持ってして地球を浄化することを示せば、ザンスカールの市民は更にマリアの力を信じるでしょうし。だとすれば、エンジェル・ハイロゥの使用はカガチとマリアの共同作業であったと言えます。マリアを使うことが前提であるというところに、カガチの個人的な感情が垣間見えるような気がします。
 エンジェル・ハイロゥの原理自体は、サイコフレームによるアクシズ・ショックに近いと言えます。強制的に集めた際キッカーたちの共振をマリアを中心に行うことで、サイコミュの感応波を最大限に増幅させていると読み取れます。サイコフレームとの違いは、集めた感応波をダイレクトに地球の人々に送り込み、催眠状態にしてしまうというところです。これができる点が、ニュータイプとサイキッカーの違いかもしれません。
 サイキッカーが事実上のニュータイプの上位互換であるとすれば、カガチのやろうとしたことは、ニュータイプによるオールドタイプの粛清であるようにも読み取れます。ただ、サイキッカー達をあのように扱うところを見ると、シャアのようにニュータイプに希望を見出しているわけでもないようです。むしろ、オールドタイプにもニュータイプにも絶望しているように思えます。
 カガチのマリアの扱いにしても、シャアにとってのララァのような大切な存在ではなく、幻影のマリアに発砲していることから死なせてもいいように思っているようです。愛情が裏返ったものである可能性もありますが、いずれにしてもカガチにはシロッコ同様、女性を支配しようとする傾向があるのかもしれません。マリアを支配し、ニュータイプをコントロールした上でオールドタイプの殲滅兵器として使用する。シロッコがサラやレコアに対して行った仕打ちよりもはるかにエグいですね。歳を重ねている分、女性や人類全体に対する考え方も歪んでしまったのかもしれません。

 自らの活躍の場を求めて生き急いだシロッコと、急がず長く生きた分だけより歪んでしまったカガチ。「木星からエネルギー源を採取することが前提」という宇宙世紀のエネルギー事情が生み出した暗部がこの2人の悪役だった、というバックグラウンドはいかがでしょうか。
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カガチやシロッコ達は木星帝国の全く地球に頼らない宇宙での自給自足生活の最たる物を目撃していたはずで、その際にドゥガチから受けた事が地球に人間がいつまでも居るべきでは無いという所につながるのかなと。
クロスボーンガンダムゴーストで触れられ掛けている範囲ですかね。カガチと木星帝国との関係は
2014/03/28 (金) 21:47:05 | URL | #-[ 編集 ]
こうして比べてみると宇宙世紀のラスボスのキャラクターというか思想は似通っていますね。(シャアやハマーンも根っこの部分は同じ気がしますし)
まあ、全員富野監督が作成したキャラだから当然かも知れませんが。
先日富野監督による新作ガンダムの制作が発表されましたが、ラスボスがどんなキャラか今から楽しみですね。
2014/03/28 (金) 22:05:48 | URL | #-[ 編集 ]
宇宙世紀は逆シャアぐらいまでは「腐った世の中に対して新しい世代が物申す」という保守vs革新だったのが
マイッツァーやドゥガチ、カガチらによる「腐った世界に対して人生に絶望し辛酸を嘗めきった老人世代が動く」
となっているのが構図として面白いですね。保守すらもう弱り切っている。
既得権益を壊し新しい世界を作ろうというものから、人類に対して深い絶望にどんどん首謀者側の動機が変わっていったのは、
80~90年代の世相がそのまま反映されてるのかもしれません。
富野さんが∀や今度始まるGレコで宇宙世紀の次の世紀に、時代を飛ばしたのは
ある意味、宇宙世紀は行き着いたところまで行ってしまったという思いがあったからかも。
2014/03/29 (土) 07:12:06 | URL | AAA #-[ 編集 ]
>クロボンゴースト
そういえばこれ読んでませんでした。
もうF91以降の時代は長谷川ワールドの専売特許になりつつありますね。
確かに宇宙空間での自給自足生活をしてきた人間にとっては、未だに地球に住んでいる人間は原始的に見えるのかもしれませんね。

>富野ラスボス
基本的には一貫していますね。人口が増加しているっていうなら減らせばいいじゃない、減らすなら地球の奴らからだよねっていうあたりが。
∀以降の監督の思想はかなり変化しているので、それも含めて新作は楽しみですね。

>AAAさん
確かに、時代と共にラスボスの思考は変わっていますね。
宇宙世紀は黒歴史と化して終着点まで描かれましたから、新たにやるなら宇宙世紀の次の世代ということなんでしょうね。
個人的には、やっと「地球とコロニー」の枠が終わってくれるのでとても楽しみです。
2014/03/31 (月) 18:48:52 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
ゴーストはまだ読まれていないそうなので詳細は伏せますが、劇中のセリフから察するに(ゴーストを肯定するなら)カガチは最初からエンジェルハイロゥとゴーストの鍵となってるもので決着をつけるために行動していたようですね。
カロッゾは人口削減のためにバグで無差別殺傷を目論みましたが、カガチはエンジェルハイロゥを使って何をしたかったのかは気になる所です。
2014/03/31 (月) 23:01:26 | URL | 匿名希望 #-[ 編集 ]
対抗するのがカサレリアで自生的に生きてきたストリートチルドレンみたいな連中、というのもポイントなのかなと。
母性をぶつけてくる連中に対して、ホワイトアークの連中は実際に赤ん坊を兵器として使ってますし。
2014/04/08 (火) 10:52:51 | URL | さわK #-[ 編集 ]
>匿名希望さん
アニメの時点で最初からカガチはエンジェルハイロゥ前提だったでしょうね。
監督としてもカイラスギリーとエンジェルハイロゥを出すことは決まっていて、バイク戦艦の後期地上戦の部分が後付けだったみたいですし。

>さわKさん
子供を遺せず自分の老いと共に終わる地球をイメージしていたカガチに対し、
実際に全く別の場所で育った次の世代の子供たちが立ち塞がるという側面もありますね。
「生き物は親を越えるものです。親は子を生んで死んでいくものなんです」こそがVガンダムの根源なのかもしれません。
2014/05/04 (日) 13:34:06 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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