がんだまぁBlog
ガンダムネタだけを語るブログです。
パイロット能力と政治力を併せ持つニュータイプについて
 ファーストガンダムにおいて、ニュータイプという存在は、MSやMAのパイロットという形でしかその能力の片鱗を見せることができませんでした。これはそもそも兵士の研究過程からその存在が発見され、兵器の運用者としての能力を求められて育成された部分があるからですが、その後Zガンダムの時代においては、シロッコとハマーンという、パイロット能力に加えて組織のトップとして暗躍する力を持っていたキャラクターが登場します。
 何故そのような存在が現れたのか、少し考察してみようと思います。

 まずハマーンについては、以前少し考察したことがあるのですが、組織のトップに立てたのは、ニュータイプとしての能力よりも家柄や人柄による部分が大きく、またそもそも人材があまり豊富ではないというアクシズ特有の事情もあっての立場であったと言えます。あえてニュータイプであることに意味があった側面があるとすれば、それはシャアとの関係はニュータイプでなければそこまで深くならなかったかもしれない、ということくらいでしょうか。
 また、アクシズが軍人中心の残党組織であったことを考えると、単純にMSパイロットとして最高の能力を持っていたのがハマーンであったからだという考え方もできます。シャアがいた頃は、シャアに次ぐナンバー2というポジションだったんじゃないかと思いますので(キュベレイがすでに完成していたらすでにナンバー1だったかもしれませんが・笑)、戦闘指揮官として事実上トップであったシャアを補佐する傍ら、シャアの立ち振る舞いを見て自身も指揮官としての振る舞いを覚えていったのかなと思います。当時のアニメ誌ではキシリアに可愛がられている幼いハマーンのイラストがあったりするので、キシリアの影響も大きいのかもしれませんが。
 またZZの裏設定によると、そもそも当初よりハマーンは強い野心を抱いていたようで、トップに立つ気は満々だったようです。ザビ家への恨みもあったのでしょうね。

 このように考えると、そもそもアクシズという場所自体、人材に乏しく、ザビ家の嫡子がいて要塞クラスの小惑星を拠点としているということを除くと、デラーズ・フリートやその他残党と対して変わらない環境であったのかなと思います。そんな中で、高いニュータイプ能力を持った上に強い野心も持っている少女がいたとすれば、実質的な指導者になってもおかしくはないか、ということですね。袖付きでいうと、マリーダの能力を持ったミネバということになります。そりゃ、フロンタル(シャア)がいなかったら間違いなくトップですね(笑)。


 その意味で考えると、シロッコという人物もまた、ジュピトリスという閉鎖空間でのリーダーであったことになります。ジュピトリス自体は、単に木星まで行ってヘリウム3を採取してくるのが目的ですが、所属自体は連邦軍です。となると、ジュピトリスの構成員は基本的に連邦軍人であったはずです。そのため、シロッコもまた、軍人中心の組織の中での実質的リーダーということになります。

 このことから、ハマーンとシロッコには一つの共通点が見出せます。それは、双方とも小規模の、軍人中心の組織に属していたことです。つまり、「パイロット能力が優れていること」が優劣の条件となる集団の中にいたからこそ、トップに立つことができたと言えます。
 そして、単にパイロットとして優れていただけではなく、強い野心と、集団を統率する指導力を兼ね備えていたからこそ、エゥーゴやティターンズをかき回すだけの立ち回りが可能な組織となり得たと言えます。このプラス要素が、一年戦争時代のニュータイプにはない要素だったと考えられます。
 アムロは最強のパイロットでしたが、決して指揮官の役割を担っていたわけではありませんし、特に野心もありませんでした。シャアは指揮官としても優秀な能力を持っていましたが、組織のトップに立つ野心をもっていませんでした。しかしハマーンとシロッコは、組織のトップとして集団を統率する強い野心を持っていた点が、大きな違いと言えるのです。

 本来、軍人であっても、必ずしも実力のある者が上に立つわけではありません。軍人にとって重要なのは能力よりも階級であって、この階級に沿って組織をつくり行動するのが基本と言えます。しかし、アクシズもジュピトリスも、この階級制が厳格に適用される集団ではなかったのだと思います。アクシズには明確な階級がないようでしたし、ジュピトリスは描写がほとんどありませんが、そもそも戦闘要員がほとんどいなかったようなので事務上の階級はあっても戦闘時に厳密に適用するほどのものではなかったのではないでしょうか。
 そうであるならば、ニュータイプが組織のリーダーとなり得たのは、「軍人中心」で「階級が厳密に適用されない」集団の中で、「明確な野心」を持っていたことに拠ると言えます。これは、同じような組織であるはずのエゥーゴにおいて、シャアが同じ立場にありながら、野心がないがためにリーダーとしての役割をほとんど果たさなかったことと、対照的です。ある意味では、ハマーンとシロッコは、シャアにはないものを持ったニュータイプとして描かれていると言えます。

 同じ観点で同時代のアムロを見ると、彼の場合は階級が厳密に適用される、地球圏最大規模の軍隊である連邦正規軍に属していました。しかし階級としては大尉であり、士官学校を経ていない者の中では最高クラスの階級にすでに昇進しています。ブライトの一年戦争当時の階級だったことを考えると、一艦長くらいは任せられてもおかしくない階級ということです。艦長クラスの権限があれば、一部隊率いて反乱を起こすことも可能ですので、そのようなことを恐れての軟禁だったのかもしれません。

 一方で、連邦軍の階級制度を超越した組織として登場したのが、ティターンズという組織でした。この組織は正規軍の階級は適用されないとしてブライトを殴ったり、法改正を行って実際に既存の階級制度を無視した組織として認められた経緯があります。
 その意味では、グリプス戦役というのは、基本的に既存の階級制度を超越して世界に変革を起こそうとした者たちの争いだったのではないかとさえ考えることが可能となります。エゥーゴは、そのような形で世界に混沌をもたらそうとしているティターンズを止めるために結成された義勇軍というところでしょうか。

 このような背景により、ティターンズやエゥーゴという既存の軍隊の階級制度の元にない軍事組織が争っていたことで、シロッコがのしあがり、ハマーンが対抗できる環境が整っていたとも言えそうです。
 とはいえ、ニュータイプ本人に実際に組織を指揮する能力がなければ、仮に環境が整い本人に意思があったとしても、機能せず瓦解してしまいます。ニュータイプの一体何が、この時代のリーダーを生み出したのでしょうか。

 ヒントとなるのは、階級を無視した組織、というところだと思います。人間が集団で行動するには、どうしても組織として整っている必要があります。集団全体が利益を得るには、個人は各々の利益を犠牲にして行動する必要があり、それを各個人に強いるには組織としての強制力が必要となるからです。
 しかし、組織が成熟してくると、逆に組織のシステム自体を維持することが目的となってしまい、状況の変化に対応できなくなるということがよくあります。本当は新しい時代に合わせて組織の仕組みも新しくしなければならないのですが、そのためには既存の組織で上の立場にあった人間の権限を奪う必要も生じてきますし、組織変更のための配置換えの必要性や新たなコストも生じてきます。またそれまでの組織の論理の中で構築してきた外部との人間関係なども大きな組織には絡んできます。このような複雑な組織構造を変革するのは非常に「面倒」であり、それを嫌ってなかなか変革できない組織は多いと思います。
 そこに、ニュータイプという存在が現れたのです。ニュータイプは新時代の象徴であるとされます。新しい時代には新しい世代が台頭すべきだ、という考え方をスペースノイドに適用したのがジオン・ダイクンの論理ですが、これを一個人に適用すると、ハマーンやシロッコのような存在のことを指すことになるのではないでしょうか。

 これは、「Zガンダム」の作品内における「ニュータイプ」は、ファーストガンダムのそれとはちょっと違う意味合いが込められているのではないか、ということを意味します。
 要するに、ハマーンやシロッコを指す上でのニュータイプとは、「古い時代の秩序を無視して行動できる者」という意味が込められているのではないかということです。これは、ファーストガンダムにおけるニュータイプ的概念である、「わかりあえる存在」とか「宇宙での生活に適応した新人類」とはまた違う意味となります。
 ニュータイプのもう一つの特徴に、「目の前にある物をニュートラルに判断できる」というものがあるのかもしれません。そのため、判断が組織の利害に引っ張られることなく、より現実に沿った判断を下すことができると言えます。この力こそが、ハマーンやシロッコが台頭できた理由であり、アムロが連邦に恐れられた理由であるのかなと考えます。そして野心や環境を整える政治力を持っていたジャミトフに足りなかったのも、この力だったのかなと思います。
 そういう意味では、カミーユも、ジュドーも、バナージも、この「目の前にある物をニュートラルに判断できる」という能力を持っているニュータイプであると言えます。ただ、ハマーンやシロッコとの違いは、自分の野心のための行動の犠牲となる人間がいることを無視できるかどうかという点です。徹底した合理的な判断を下すと、結果的に誰かを殺さなければならなくなることもあります。その合理的な判断の中に、他者への配慮をプラスできるかどうか、という点が主人公サイドと敵役サイドの区別になっていたとも言えるでしょうか。

 そしてアムロは、ニュータイプとしての能力を持ちながら、あえて古い組織のなかに身を置いていました。これは、ハマーンやシロッコにはあった野心を持っていなかったことに加えて、古い組織を壊す力を持っていることがいかにオールドタイプに警戒されるかどうかを、一番身を持って知っていた存在だったからなのかなと思います。
 逆にシャアは、古い組織を変えたいという野心は持っていたものの、組織の上に立って支配する野心は持っていなかったことが仇となりました。そのため、政治的に立ち回ることでの変革を行わず、物理的な力での変革を起こそうとしてしまいました。

 実際のところ、古い組織を壊す力を持つニュータイプがいたとしても、壊す過程で自分自身も壊れてしまうのではないかと思います。カミーユがそうでしたし、ジュドーも結局地球圏を離れてしまいました。ニュータイプといえど、一人で一時代を変えられるほどの力は持っていないのでしょう。しかしニュータイプには、複数の人間に自分の気持ちを伝えられる力を持っています。一握りの存在の力で世界を変革することはできなくても、多くの人が変わろうと思うきっかけを与えることはできる、というのが、「逆シャア」までのニュータイプだったんじゃないかと思います。
 その意味で、シロッコやハマーンというのは、ニュータイプとして個人の力で世界を変革しようとし、失敗するという役割を与えられていたのかもしれません。
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コメント
コメント
富野監督は以前、

少なくともファーストガンダムはコモン・センスだけで作った。分かりやすく言うと、右翼でも左翼でもなくニュートラルを貫いたんです。朝鮮戦争までの戦争の図式に則って、それを反戦でも軍国主義でもなく、ただひたすらニュートラルを意識して戦争を描いた。だから僕の主義は一切ガンダムには入れてません。子供が見るかもしれないんだから、絶対に右にも左にもブレないという覚悟をもって作ったんです

とおっしゃった。
<コモン・センス>所謂≪中庸≫ですが、対して“ことなかれ主義”的な日本は、両極つまり、老人や子供が、どこに位置するかを的確に把握する必要があります。大勢いるところが中庸ではなく、もっともバランスが取れる位置、いや「汝の隣人を愛し、汝の敵を愛せ」というキリストの寛容な綱手がニュータイプ論なのです。
2013/07/17 (水) 22:53:17 | URL | カズラキー #-[ 編集 ]
ニュータイプという言葉に何かしらの神秘主義的な匂いが(特にオリジンでは)ジオンの言葉の中に混じっているようなところがありますね。

アムロは散々「ニュータイプはエスパーではない」という旨の言葉をそれこそガンダムという作品の内外でしているわけですが、そういう認識は時代を下ってより強くなっている感もあります。

コスモ・バビロニアの女王を求められたセシリーがクロスボーン・バンガードにおいてニュータイプであるという認識がされていて、後にその分派組織を率いていたシェリンドンもニュータイプであった。象徴的な存在として祭り上げられているという面はあるにしてもニュータイプが指導的な存在になるという「神託」が流布しているのかな。
2013/07/18 (木) 22:05:07 | URL | ドクトルK #-[ 編集 ]
まあ、シャアさんが言ってた人の革新、人類総ニュータイプになったとしたら冗談抜きで絶滅しかねないですからね
F91以降革命家、思想家というよりは仙人のようなニュータイプが目立つのは結局のところ『心で解りあえる』というのがイレギュラーなコミュニケーションだという悲しい現実なのかもしれませんね
まあ、Vガンダム外伝には心で嘘のつけるニュータイプもいましたがw
2013/07/24 (水) 22:16:21 | URL | ナナシ #-[ 編集 ]
ニュータイプ(特殊能力者)の神託に関しては最終的にザンスカールのマリア辺りにも行き着きますね。
書いていて思いましたが、最初セシリーはアイドルとしての人気取りの役目を期待されていた訳ですから、案外シロッコもハマーンやUCミネバのような政治家としてのカリスマと実力を持ち合わせた個人よりは、マリアのようなカリスマだけで内政はカガチに丸投げしてくれるような人物を理想の女性として探していたのかも知れませんね。
2013/07/25 (木) 23:39:02 | URL | 匿名希望 #-[ 編集 ]
>カズラキーさん
ニュータイプ自体が右左のような思想の概念の外にいるってことですかね。
全部ひっくるめて古いものから解脱したもの、という感じの意図があるようには感じます。

>ドクトルKさん
まぁ正直今までにない新しいリーダーっていうのはいつの時代も求められるとは思います。
今までの閉塞感を打ち破ってほしい、という願望が常にあるわけですし。
そういう意味でニュータイプという存在がうってつけだったのかもしれません。

>ナナシさん
まぁ互いの心が通じたら政治の世界が殺し合いになりそうですしね(笑)
心で分かり合ったとき、その心が全く相容れないものだったらどうする、ということがある意味種以降のテーマだったりするのかもしれません。

>匿名希望さん
確かにサラとかレコアとか、とても内政とかできなそうな女性を集めていたあたりそれっぽいですね。
でもMSパイロットから探している時点でかなり難しいと思いますね、それは(笑)
2013/07/27 (土) 14:44:17 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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