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パラス・アテネのネーミングから推測するシロッコの意図
 シロッコが開発したPMX-001パラス・アテネは、ギリシャ神話の女神アテナの名称が由来となっています。シロッコは、何故そのような名称を自分が開発したMSに与えたのか、その理由とそこから推測されるシロッコの考え方について、考察してみたいと思います。

 まず、簡単にアテナのプロフィールを挙げておきます。神話なので諸説はあるのですが、一般的に言われているのは、全能の神ゼウスの娘であり、知恵を司る戦いの女神であるということです。
 ゼウスは、ウラノスの孫でありクロノスの子なのですが、クロノスとゼウスはそれぞれ自分の父親を殺して支配権を握ってきた過去があります。そしてゼウスもまた、自分の子に支配権を奪われるとの予言を受け、子の誕生を阻止して妻メティスごと飲みこんでしまうのですが、それでもゼウスの頭から生まれてきたのがその子アテナだったと言われています。アテナがゼウスから支配権を奪わなかったのは、女性だったからだと言われています。当時男性にしか支配権はなかったのでしょうね。

 この神話からも、すでにシロッコっぽさを感じることができます。シロッコは、「世界を支配するのは女性であるべき」という考えを持っていました。アテナは、本来であればゼウスを倒し覇権を得ることができる立場だったはずなのですが、女神であるという理由でそれが適わなかったことになります。シロッコは、「世界を支配すべき女性」の理想像として、女神アテナを思い描いたのかもしれません。

 またそのようなことまで考えなくとも、単純に戦いの女神の象徴として、女性が乗るMSにそう名付けたということも考えられます。GジェネのオリジナルMSであるタイタニアはシロッコが理想とする女性のために開発したMSですが、それ以前にパラス・アテネの時点でそのような意図があった可能性は考えられます。
 そもそも、PMXナンバーはシロッコのハンドメイドであり、正規のルートで開発されたMSではありません。そのままでの量産はそもそも想定されていないと思われることから、シロッコに近しい人物にしか与える予定はなかったのだと思われます。自分用のメッサーラやジ・O、支援用のボリノーク・サマーンと比較すると、明らかに戦闘用のパラス・アテネは、シロッコの僚機あるいはシロッコ不在時の指揮官機を想定していたと考えられます。単純に、シロッコ率いる軍勢のリーダーとして、アテナの名を関したと考えることも可能です。

 ところで、アテナというギリシャ神話の神から名を取っていることには、もう一つ重大な意味があります。それは、ティターンズという組織名称自体もまた、ギリシャ神話を元ネタにしているということです。
 ティターンズの名称は、ゼウスの先代神であるクロノスを頂点とする巨人族のティターン神族から取られています(余談ですが、ティターンズの名称の由来を「大地の子ら」とする説ってどこかに書いてありましたっけ)。そしてこのティターン神族を打ち倒したのが、ゼウス率いるオリンポスの神々であるとされています。
 このことから考えると、アテナというオリンポスの神々の一人を名称に挙げたことは、ティターンズという古き神を打倒することを意図していたのではないか…と推測できます。
 実際に、パラス・アテネを駆ったレコアは、TV版ではティターンズ旗艦ドゴス・ギアを沈めて総帥バスクを抹殺しています。もしかしたら、シロッコがティターンズに反旗を翻した時の主導を行う機体として、パラス・アテネという独自のMSを開発していたのかもしれません。正規のMSでなければ、やったのが連邦軍側ではないようにごまかすこともできるからです。

 だとすると、シロッコは当初よりティターンズに対し反乱を起こすことを計画していたことになります。どのタイミングで行うかは、それこそ「時代の流れ」によるのでしょうが、そのような選択肢は当初より持っていたのかもしれません。
 そうなると、パラス・アテネに何故レコアが乗ることになったのかもなんとなく見えてきます。一見、戦いの女神として先陣を切るには相応しくなさそう(MSパイロットはたぶん本職ではないため)なレコアですが、エゥーゴから寝返ってきたパイロットであれば、ティターンズの頭を潰す仕事をためらいなくできるはずです。パラス・アテネが対ティターンズ用のMSであったとするならば、確かにパイロットとしてはレコアが最適だったのかもしれません。

 ところで、シロッコが乗るジ・Oの意味は「神の意志」であると言われています。そもそもthe-Oとはつまり完全なる者(Oが真円を意味するのかと)、全能者という意味が込められているのでしょうから、要するに神そのものを意味することになります。ギリシャ神話でいうならば、それはゼウスのことを指すのでしょう。そして、ゼウスはアテナの父にあたります。
 このことから察するに、シロッコはやはり支配者が女性であるべきと思っていても、その上あるいは背後にいるのが自分、というのが前提であったのかなと思います。あわよくば自分を倒してのし上がるような女性なら、それはそれで良しと思っていたのかもしれませんが。

 シロッコにとってレコアはイレギュラーであり、意図的に引き入れた女性ではありません。そのことを考えると、パラス・アテネに当初からレコアを乗せるつもりで作っていたわけではないことは明らかです。本当の意味で世界を支配すべきだと思える女性は、シロッコの前には現れませんでした。だから、パラス・アテネは真の意味でのアテナ的存在ではなく、あくまでもティターンズを倒す役割だけを与えるしかなかったのだと思います。
 そう考えると、シロッコが理想とする女性の支配者論も、どこまで真実味をもって考えていたのか微妙なところです。単に、女性を口説く方便として使っていたようにも思えます。自分が女性を支配したいのではなく、女性を支える側の人間だというアピールとして。
 もしそうでなく本当にそう考えているのであれば、それは少女が白馬の王子様を待ちわびるような次元での、理想の女性像的なものを前提としていたという推測になってしまいます。シャアが「人類全体がニュータイプになれば、世界は変わる」と思い込んでいたように、シロッコも「自分が認める超天才の女性が現れれば、その女性は世界を支配すべき存在である」と思い込んでいたということです。ニュータイプ信奉が(天才の)女性信奉に変わっただけの、同じレベルの理想論者ということになりますね。シロッコはある意味では「新たなシャア的存在」という立ち位置で設定されたキャラではあるので、もしかしたらそういう意図もあったのかもしれません。

 シロッコは自分自身が天才であると自認しているキャラですが、そんなシロッコ自身が、自分ではなく女性が世界を支配すべきだと思っている背景については、ちょっと考える材料が足りません。しかし、どうも人工的に生み出された存在であるようなこと、新訳では「心を閉ざしている」「女たちの元に帰れ」と言われていることなどから、もしかしたらシロッコには、人工的に生み出されたが故に母性的な何かが欠けており、それ故に自分が知らない「母性的なもの」に対して憧れを抱いている深層心理があったりするのかなと思います。シャアがララァに母親を見出したように、シロッコが求めていたのも、究極の母親像的なものだったのかもしれません。シロッコにとってのララァは、ついに現れませんでしたが。

 そういう意味では、両親に屈折した感情を抱いているカミーユと、そもそも親というものを知らないシロッコというのは、対比的な存在とも言えます。シロッコが親そのものに対して憧憬を持っているとすれば、カミーユは親はいたものの、親の役目を十分に果たしてくれなかったというキャラです。もしシロッコとカミーユの戦いがギリギリでカミーユの勝ちであった意味を考えるのであれば、その明暗を分けたのは、「それでも親がいたかどうか」だったりしたのかもしれません。
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コメント
コメント
案外、ザビーネとベラ・ロナみたいな関係を夢見てたのかも知れませんね、シロッコは
理想に燃える女王に忠節を尽くす騎士、てのはシロッコの対極かも知れませんが
2013/04/18 (木) 20:47:20 | URL | #-[ 編集 ]
初めまして
「レコアがイレギュラーな存在だった」というのは同意ですが、単に女性を口説くための「女性が支配説」だったということはないと思います。

ただ「自分を超える女性待望論」でもよいのですが、シロッコの狙いは歴史上散見される「女帝を立てて陰からこっそり男が支配する手法」だったのではないでしょうか。考えてみれば後のカガチもマリアを擁立していましたから、富野監督の中に「女帝を立てて陰から支配する男」という悪役の雛形があるのかも知れません。もちろん相手は自分に心酔している必要があります。

で、当初シロッコはサラとシドレを候補と考えて、2人の競争心を煽るつもりだったと考えます(ジ・オと連携する機体としてパラス・アテネとボリノーク・サマーンの2機開発していたのもそういうこと)。シドレが急死して予定が狂ったところに、レコアが合流…というところではないでしょうか。

2013/04/18 (木) 22:13:31 | URL | yoh #L/7fSiWg[ 編集 ]
今回も興味深く読ませて頂きました。神話ネタって深読みがしやすいぶん、解釈ネタには好材料ですよね(昨今だとやりすぎて「厨二」とか言われやすい材料でもありますがw)。

>シロッコにとってのララァは、ついに現れませんでしたが。
小説版Ζでは、その位置(正確にはシロッコの「精神的支柱」という位置)におさまっているのがサラのようにも読み取れます。これは世界を支配する女性と、自分を支えてくれる女性とを、ちゃんと区別しているってことなんでしょうかね、やっぱり。
2013/04/19 (金) 07:22:42 | URL | 松裕堂 #6eUroIng[ 編集 ]
>名無しさん
立ち位置としてはザビーネとシロッコは近いかもしれませんね。
というかコスモ貴族主義自体、シロッコの理想を体現した考え方であるような気もします。
マリア主義もその延長な感じで、冨野監督の女系支配の考え方の系譜の原点なのかもしれませんね。その終着点がディアナ様であったと。

>yohさん
シドレがシロッコにどのくらい期待されていたかはちょっとわかりませんが、
マウアーにもレコアと同じような言葉をかけていましたし、
使えそうな女性が出てくれば、という気持ちはあったような気がしますね。
サラはあまり戦闘向きではないということがシロッコにもわかっていて、支援用のボリノーク・サマーンだったのかなという気もします。

>松裕堂さん
冨野監督が神話ネタを積極的に引っ張ってくるのは珍しい気がして、特に気になったんですよね。
ティターンズもパラス・アテネも、企画書段階から存在する言葉ですし、なにか当初から意図があったのかなと。

シロッコにとってサラは、唯一自分を心から慕ってくれる存在という感じだったように見えますね。
ニュータイプ的な感応でも分かり合っていたようですし、ある意味ではシャアとララァ以上に心が通じていたように思えます。
ただ、そういう女性に、シロッコが求める指導者としての才覚はなかったというのが一つのドラマだったのかもしれませんね。
もうちょっと待てば、ミネバ様が理想的に育ってくれたんですが(笑)
2013/04/21 (日) 22:52:33 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
アテナについては知っていてもパラスは割と知られてないよね…
家族同然の親友にして好敵手、ってなんか意味深だと思うんだけど・・・
2013/04/26 (金) 12:50:03 | URL | #-[ 編集 ]
パラスの話はあまり有名じゃなさそうだったんで省いてしまいました。
Zの企画段階ではパラス・ティフォンというMSもあったんで、
それと絡めて何か考察できないかなと思ったんですが、
ちょっと思いつきませんでしたね…。
2013/04/29 (月) 10:35:52 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
ゼウス(木星)から生まれたことも関係してるのかもしれませんね。
2013/06/18 (火) 23:34:42 | URL | カセクシス #sHxuQVRw[ 編集 ]
なるほど、ゼウスと木星の関連は思い当たりませんでした。
確かに木星に全能の神の名が与えられたことと、
木星帰りのシロッコが「神の意志」の名を持つMSを駆ることには関連性を見出せそうですね。

地球と木星の間にある火星は、アテナとは別の戦いの神の名が与えられているのも興味深いところです(笑)
2013/07/05 (金) 21:50:45 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
そういえば、キュベレイも神様の名前でしたねえ。
2013/07/06 (土) 08:11:24 | URL | Painter #-[ 編集 ]
そうですね。
キュベレイはまた時代や地域が微妙に異なる神話ベースなので、
ギリシャ神話はティターンズで、アクシズはまた別の神話という意図が冨野監督の中にあったのかもしれませんね。
2013/07/07 (日) 12:50:32 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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