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ジャミトフの真意と行動理念を分析する
 ジャミトフ・ハイマンの目的は、わずかに語られてはいるものの、具体的にどのような結果を得ることが目的で、またそれに至るために具体的にどのような行動を取りたかったのか、はっきり描かれていませんでした。どうもティターンズ構成員の悪行ばかりが目立ち、本人はシロッコに暗殺されてしまったがために、かなりぼやけたままになってしまっています。
 ジャミトフが本当にしたかったことはどういうことなのか、少し考えてみようと思います。

 まずジャミトフの目的については、TV版でのシロッコの台詞と、小説版での描写から読み取る事が出来ます。以下に引用してみます。

(シロッコの台詞)
「ジャミトフは、地球に引かれている人々を根絶やしにするために、地球連邦軍をティターンズにした」
「戦争を起こして、地球の経済を徹底的に窮地に追い込めば、地球上の人間は餓死をしていなくなる」
「問題はその後だ。戦争の後で、誰が人類の支配を握るかで、地球圏はどうにでもなる」

(小説版の描写)
 ジャミトフは、かつてのジオン公国のギレン・ザビの主義に共感する男である。
 ジャミトフは、ギレンの主義は良かったのだが、やり方が間違っていたと信じる男であった。独裁が見えすぎるのが良くなかったのだ。
 大体、ジオン・ダイクンの意思を受ける体制を引き継がざるを得なかったギレンでは、元々敗北を喫する要因を抱えているに等しかったとジャミトフは見ていた。
 「頑冥な人々は、地球上で掃討し、無知無能な者は、コロニー開発に追いあげる。それが、地球上から人間を排除する方法なのだ。今となれば、地球に残りたがるエリート意識に凝り固まった選民は、危機に陥った地球に残して、飢えさせれば良いのだ。が、そんな手段を講じているうちに地球が疲弊しすぎるという危機感があるからこそ、軍を組織して地球経済に打撃を与え、ついでに地球上の選民を抹殺する……」
 それがジャミトフの予定である。その理論の一面は正しい。しかし、物理的な手段を講じてしまうところに、ジャミトフの倣岸さがあった。が、それもジャミトフ自身が認めているところなのだ。
「歳だ。いつ死んでもよい。私の死ぬまでに、地球圏に対して必須のことをやってみせる」
 そのために、ジャミトフは、一年戦争の終息と同時に、自身の血の類縁の全てと訣別をして、ティターンズの組織作りに入ったのである。


 この2つの描写から、少なくとも富野監督の中では、ジャミトフの目的は地球人口の掃討であると読み取る事が出来ます。その後シャアがアクシズを落とす事や、鉄仮面がバグを送り込むこと、カガチがエンジェル・ハイロゥを使ってやろうとしていたことと、結果的には同じであり、そういう意味では富野監督の中での悪役の思考は一貫しているとも言えます。
 ただ、ジャミトフはアクシズ落としやバグ、エンジェル・ハイロゥといった物理的手段によって一気に地球の人々を死滅させるのではなく、戦争という行為によって間接的に目的を達成しようとしていたところに、わかりにくさがありました。

 ジャミトフはギレンに共感しているということから、おそらく選民思考を持ち、人間の間引きを行いたいと思っていたと考えられます。優秀な人間のみを残して、不要な人間は抹殺するという考え方です。ただしそれだけでなく、地球上から人類はいなくなるべきだという考えも持っていました。これはジオン・ダイクンの思想の一つでもあり、ブレックスやシャアが目標としていたことと同じでもあります。
 あえて違いを言うのであれば、ブレックスは政治家(つまり議会)を宇宙に上げてしまいたいと思っていたところでしょうか。ジャミトフは地球に残りたい政治家は残した上で殺せばいいと思っていました。しかし、いなくなった政治家の補填までは考えていなかったように思います。血縁者全てとの縁を断って決死の覚悟を持っているあたり、ジャミトフの目的は新しい時代を作ることではなく、古い時代を壊す事に特化していたとも考えられます。だからこそ、シロッコはその後の世界の主導権を握るために、ジャミトフについたということです。

 シャアがアクシズを落とそうとしたのも、地球を住めなくして宇宙移民を促進し、後はニュータイプの覚醒を待てばいいという考えがあってのことで、その後の世界の統治までは考えていなかったようでした。その後の悪役達も同様に、地球さえ滅ぼせればあとはどうでもよさそうな側面が見えました。だとするとジャミトフもまた、そうであったのかなと思えます。

 ところで、ではジャミトフはどのようにして地球に住む者を抹殺しようとしていたのでしょうか。そのために作ったとされるティターンズは、地球至上主義者を集めた、いわば地球のために戦う集団です。地球の人々を殺すための集団ではありません。むしろ、それはエゥーゴの方でした。逆のことにしているように思えます。
 しかし、ジャミトフは連邦軍の人間です。そして、連邦軍の敵はジオン残党でありスペースノイドでした。ジャミトフが戦争を起こしたいと思ったら、宇宙に出て戦うしかありません。しかし、ジャミトフの目的は地球を戦場にする事です。そのためには、地球に「攻め込んでもらわなければ」いけません。だからスペースノイドを煽って攻め込ませる必要がありました。そのためにティターンズを作ったのだと考えられます。
 つまり、ティターンズはスペースノイドを煽るために作られたのです。煽るだけ煽って、地球に攻め込んできてもらい、地球を戦場にしたかったのではないでしょうか。

 何故そのようなやり方をしたのか…ということを考えると、ジャミトフが元々連邦軍の中でも財務担当の高官であったことが要因としてあるような気がします。というのも、ジャミトフが財務の職務に就いてたのであれば、当然一年戦争でどれだけ経済が疲弊し、またその復興にどれだけの予算が費やされたかを知っていたはずです。つまり、戦争による経済へのダメージの大きさを熟知していたと言えます。
 ジャミトフは、ギレンに共感していたことから、一年戦争中はこのまま人口がもって減ってくれればいいと思っていたはずです。しかし、戦争は終わってしまいました。このまま地球とその経済にダメージが与えられ続ければ、理想的な人減らしができたのに…と思っていたのかもしれません。だったら、自らがその戦争を継続させればいいのではないか、と思い当たったのではないでしょうか。

 つまり、ジャミトフは一年戦争の継続を求めていたのかもしれないということです。それも地球を戦場にした上で。そのために、あえてジオン残党を煽るようにティターンズを組織し、スペースノイドを弾圧し、エゥーゴの蜂起を促し、ついにはジャブローに攻め込ませることに成功したのです。
 このどこまでがジャミトフの計算通りだったのかは、描写からは判断できません。ブレックスがエゥーゴを作ることも、それにメラニーのアナハイムが協力することも、ジャブローに攻め込んだことも、全てジャミトフの意図だったとすれば、恐ろしい限りです。
 もしそうだとすれば、ブレックスに限りなく近い人間にジャミトフのスパイがいたことになります。それなら、ジャブロー攻撃が強行されたのも、ブレックスがあっけなく暗殺されたのも理解できます。スポンサー側に、ジャミトフ派がいた可能性はありますね。

 しかし、そのようなことを考えると、Zガンダム後半の展開は、まるでジャミトフの意図するところではなかったように思えます。戦場が宇宙に移ってしまったため、地球にダメージを与える事はあまりできませんでしたし、ブレックスを殺してしまった事でエゥーゴの組織も弱体化し、アクシズに頼らないとティターンズに対抗できない有様でした。それどころか、ブレックスの後を継いだシャアによってティターンズの悪行が明らかになり、立場は逆転してしまっています。
 そもそも、ブレックスは何故暗殺されたのでしょうか。これは以前も考察しましたが、おそらくブレックスが全ての政治家の宇宙移民を緊急動議で提案しようとしていたからだと思われます。というかそれ以外に劇中から読み取れる要因はありません。もう一つ、ジャミトフの意図ではないという可能性がありますが、小説版の描写を見る限りでは、そうではないように思えます。

 というのも、小説版ではカラバのキリマンジャロ攻撃は、ブレックス暗殺への報復とティターンズが連邦軍の指揮権を得る法案可決に対する反対の意思表明だったからです。つまり、ジャブローを攻撃した後撤退していったエゥーゴを、再び地球に呼び寄せるための手段としての、ブレックス暗殺だったとも言えます。
 しかし、それは最後の手段とも言えました。エゥーゴのトップを殺してしまえば、せっかく出来上がった反対組織が瓦解してしまう可能性があるからです。トップはいくらでも挿げ替えられるという余裕もあったのかもしれませんが、代わりにトップになったのはシャアでした。これは、ジャミトフには計算外だったのかもしれません。

 その後、ジャミトフはシャアの演説で窮地に陥り、宇宙でもアクシズと連動したエゥーゴに追い詰められ、シロッコに見限られて殺されてしまいます。その意味では、ジャミトフはシャアの存在を読みきれなかったことが結果的に失敗に繋がったとも言えそうです。
 しかし、その後のシャアがやったことは、むしろジャミトフの理想に近い事でした。その意味では、むしろシロッコではなくシャアを抱き込んでいたほうが(サイドストーリーオブZのように)、ジャミトフは目的を達成できたかもしれません。それでも、最後はシャアに殺されてそうですけどね(笑)
 また、ジャミトフは同じ連邦軍の一部であるエゥーゴに対しては内部で繋がることができたかもしれませんが、アクシズの帰還は想定外だったかもしれません。特に通じていた様子はなく、ハマーンともあっけなく決裂しています。そのハマーンの相手をさせるためにシロッコを登用したとも考えられますが、シロッコはハマーンと通じて裏切る素振りも見せており、その結果ジャミトフが自らハマーンと接触しようとグワダンに行って殺されたという経緯があります。
 そういう意味では、ジャミトフはシャア、シロッコ、ハマーンといったニュータイプの指導者たちのことを捉えきることができなかったが故に、歴史から去ることになってしまったのかもしれません。まさに、地球の重力に魂を引かれた者であるが故に結末と言えそうです。

 ジャミトフの相手がブレックスとメラニーだけならば、どうにでもなったと思います。ブレックスに対して政治力で勝っていますし、メラニーは戦争が続いた方が都合がいいので、ジャミトフに表立っては反抗しません。しかし新世代の指導者たちに対しては、対抗する術を持っていなかったということですね。
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ハマーンがアクシズと共に帰還したのは、むしろジャミトフにしては願ってもない幸運だったかも知れませんね。
ティターンズが宇宙に追われ、帰還が絶望視されても地球を戦場にするであろう勢力が現れたんですし
2012/11/11 (日) 15:08:21 | URL | ナナシ #-[ 編集 ]
老害が次世代に駆逐された…わけですね。
2012/11/12 (月) 01:27:23 | URL | 梅安 #-[ 編集 ]
ギレンやジャミトフ、シロッコのような自分中心に宇宙が回っていると錯覚する人々も実はシャアを中心に回っている惑星の一つにすぎないわけですね。
その後、中心を失いそれぞれがバラバラに回っている宇宙世紀において軸の通った物語が作れないのは必然だったのかもしれませんね。
2012/11/13 (火) 12:59:06 | URL | shimora #Qi8cNrCA[ 編集 ]
>ナナシさん
エゥーゴに勝利していれば、アクシズは地球に降下してくれたでしょうから願ってもない展開だったんですが、
それ以前にエゥーゴとアクシズに手を組まれてしまうと勝ち目がなかったというのは逆に不運だったとも言えますね。
まさかアクシズそのものをぶつけられるなんて考えてなかったでしょうし。

>梅安さん
言ってしまえばそういうことですね。ただ、次世代の指導者たちがそれぞれ正しい道を選んだかというと、そうではなかったから結局連邦の一番の老害は残ったままになってしまったのですが。

>shimoraさん
ただシャア自身も、周囲を回っている惑星に惑わされて道を見失ってしまった感があります。
シャアとして成したことが大きすぎてネオジオンのトップに立つしかなかったというのは、
ガンダムのヒットが大きすぎてその後も続編を作るしかなかった富野監督とリンクしているのかもしれません。
2012/11/22 (木) 19:34:50 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
グーグルでジャミトフを検索してここに来ました。
実にいい論だと思います。
彼に付いては部下に恵まれなかったという意見がよく聞かれますがそれは必然ですね。

地球に残る選民を殺す、という
表現が文中使われていますが、経済がまわらない為に死ぬ、それを選択するのは選民自身ですので適切ではないと感じます。
たとえ、そこに誘導したのがジャミトフであったとしても。

「地球の重力に魂を引かれた者」この表現についてはいくつか解釈の分かれる所で、腐敗した連邦の政治家、地球から離れたくないと考える者達の事だとも言え、で、あればジャミトフは地球の重力に魂を引かれた者ではないのかもしれません。

ただ、地球を中心に、地球が大切なものであり、それを守る為に人は宇宙へ出なければいけない、という考え自体も重力に魂を引かれているといえますね。

そこから更に言えばスペースノイドがコロニー落としなどというとんでもないをやっているのは、彼らが地球で育った事がないからでもあるし、その境地に至れなかった事がジャミトフの最大の敗因なのかもしれません。
尤も彼はその境地を嫌悪しそうですが。そこが古いタイプ、まさにオールドタイプです。
2013/05/21 (火) 07:28:38 | URL | #-[ 編集 ]
書き込みありがとうございます。

ジャミトフはアースノイドの立場で地球潰しをやろうとしたという意味では他の悪役とは違う点かなと思います。
アースノイドだからこそ、急激に地球を傷つけるようなことはできなかったという側面もあるでしょうし、
だからこそスペースノイドの発想についていけなかったという側面もあるのかもしれません。

地球に魂を引かれていたかどうかはともかく、古い地球人の立場でやれることをやろうとした人物だったのかなと思います。
2013/05/31 (金) 22:47:14 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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