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ガンダムネタだけを語るブログです。
エリート学生としてのカミーユ・ビダン
 以前、カミーユとジュドーを比較した時に、カミーユはどちらかというと上流階級の人間であり、その点でジュドーとは対極にあるということを言いました。
 今回はそれを更に発展させた話です。

 事の発端は、カミーユはアムロと比較して、成長描写が極めて少ないと感じたことでした。

 アムロの場合、当初は完全にガンダムの性能に頼りきった素人であって、操縦技術についてはシャアやラルに比べて大きく劣るように描かれていました。しかしその後死闘を何度も経験していく事とニュータイプとしての覚醒により、パイロット能力においてもシャアを凌駕し、ガンダムの機体性能を持て余すほどにまで成長しました。

 カミーユの場合、操縦能力に向上が見られた描写も、ニュータイプとしての能力が格段に上昇したような描写も、あまり見られていません。序盤からガンダムとザクに比べるとさほど性能差の無いガンダムMk-IIで連邦のエースであるライラのガルバルディを一対一で撃破し、ジェリドとの戦いではそのほとんどを勝利し、ザコ敵に対しては序盤も終盤もさほど変わらない戦いぶりを見せていたように思います。
 最終局面こそとてつもない力を発揮しましたが、それについても事前説明はほとんど無く、唐突な印象を受けるものでした。代わりに、後半はカミーユが精神的に疲弊し、追い込まれていく(代わりに戦闘では感覚が研ぎ澄まされていく)段階が描写されていたように思います。

 そのため、わかりやすく成長を描いたアムロを主人公とするファーストガンダムに対し、成長の具合が見えづらいカミーユを主人公とするZガンダムは、作品として一般への認知度が低くなっても仕方ない内容であったと感じていました。
 カミーユの場合、右肩上がりの成長というよりは、当初からそれなりの才能を持っていた主人公が、色々なものを失う代わりに戦う力を高めていき、最終的にバランスが崩れて壊れてしまう話であったことになりますが、新訳ではバランスが崩れず、元々優れた主人公が周囲の関係を維持することで壊れずに済む話となってしまいました。

 作品論で考えると、あまり王道的ではなくトータル的な完成度で考えると厳しいものがあるのがZガンダムという作品なのだと思うのですが、カミーユというキャラクターに限って考えると、結局のところ彼は天才型の人間であったのではないか、という結論に到りました。

 カミーユは、当初よりニュータイプとしてシャアに感知されるレベルであり、またジュニアMSやホモアビスでは優勝できるレベルであるなど、当初より学生としてはトップクラスの水準にある少年でした。
 その上、父親の持つガンダムMk-IIのデータも把握済みで、乗ってすぐに操縦できるレベルにもなっていました。
 これだけ書くと、運動神経は抜群で頭も良くて車やクルーザーや飛行機の操縦も出来てしまう某高校生探偵を想起できるレベルの人間なんです{笑}

 そのため、エゥーゴとして参加した彼は即戦力となり、さして初心者向けの機体でもないMk-II(訓練機だったので初心者用のセッティングはされていたんでしょうが、V作戦のMSのように素人が扱っても圧倒的な戦闘力を発揮できるようなMSではなかったので)を駆って戦果を挙げ、更にZガンダムを得てからはアムロのような劇的な覚醒を経ずしてすでに少数対少数の戦闘ではまず負けない全軍通じてトップレベルのパイロットとなっていました。

 こう考えると、カミーユは歴代ガンダム主人公の中でもかなりのミスターパーフェクトぶりであると言えます。性格的に不安定なイメージがあるためあまりピンと来ませんが、能力だけを見るとほぼ完璧です。
 ジュドーも同じ完璧型でしたが、基本的に序盤の相手はネオジオンの新兵か機体性能で大きく劣る古参兵が中心で、パイロット技術も機体性能も優れるラカンには終始苦戦したりと、段階を踏んで少しずつ高いハードルを越えて行った部分があります。
 シーブックは機体性能と母親のバイオコンピュータに助けられている部分があり、ウッソは幼少から英才教育を受けているのでどちらかというと人工培養型です。これはヒイロや刹那にも通じるものですね。ガロードは本人のスペックは高そうですがニュータイプではありませんでしたし、キラやシンはコーディネイターという当初から普通の人間とは違うということが設定された存在でした。ドモンも修行したから強いということになっています。
 それに対して、カミーユは優れた能力を持っていることに対する裏付けがあまりありません。少女漫画とかによくある「なんだか知らないけどなんでも出来る凄い少年」が彼なのです。

 このように考えると、カミーユはアムロやジュドーなどとは一線を画した主人公であるように思えます。高学歴で、現実に実績も挙げていて、身体能力も高く、家庭もエリート。その上ニュータイプとしても最高クラス、それがカミーユ・ビダンです。

 その代わり、精神は著しく不安定でした。両親との関係は悪く、自分の名前に強烈なコンプレックスを持っていて、実際に若干いじめられ気味。人とのコミュニケーションはあまり上手ではなく、信頼できる大人をちゃんと見つけられず、好きになった人とは悲惨な別れ。
 現実でもエリート学生ほどそんな環境であったりするんですが、これこそカミーユの特徴であったのかもしれません。つまり、漫画などで描かれる何でも完璧なキャラクターは、実際のところその代償にいろいろ病んでいる部分があるのだ、ということ。
 アムロもまたロボットアニメの主人公が外向的で正義感溢れていて熱血型でなければならないという既成概念を打ち破ったキャラクターではありましたが、カミーユもまたロボットアニメの主人公の万能性に対するアンチテーゼ的な部分があったのではないでしょうか。万能であるのであれば、それに伴って欠けている部分もまたあるのだ、ということです。

 ジュドーとの比較の時も書きましたが、カミーユのこのキャラクター性はどちらかというと2枚目役、主人公のライバル役に近いものなのですが、これはもしかしたらもう一人の主人公としてシャアがいたからこそなのかもしれません。実はシャアが主人公、カミーユがライバルだったのがZガンダムだったりしたのかも。そういえば主人公かと思ったらライバル側だったガンダムがありましたねぇ…。
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コメント
コメント
一番、ニュータイプとしての才能や能力が高かったのはカミーユだったのですが、天才特有の繊細さや最後は優れすぎた才能に精神がバランスをとれなくなるって描き方は本当にリアルだなと思いました。
ニュータイプが凄くても人の限界ってこんなもんだよなって思いますね
2011/08/30 (火) 10:43:44 | URL | #-[ 編集 ]
失礼ながら誤用の指摘を
>機体性能を持て余す
コレは「ガンダムでは役不足」あたりが適当かと思います。

それはさておき、カミーユは「主人公になったシャア」という見方も出来るのではないでしょうか。
良い出自、高い能力、強烈なコンプレックス、うまく人間関係を築けない、と、特徴を抜書きすればほぼ同じですし。
クワトロ時代のシャアが(比較的)良い大人であり、アムロとの関係が良好であったのも、そんなカミーユに自己を投影し、甥や弟といった肉親であるかのような思いを抱き、結果として欠落感が埋まったからなのでしょう。
2011/08/30 (火) 12:51:49 | URL | #-[ 編集 ]
Zガンダム自体、エリートやブルジョワで括られるキャラクターが結講多いんですよね。

シャアはもとよりシロッコしかり、ハマーンしかり。パーフェクトでなければエマにジェリドのようなティターンズ勢にカツもそうですね。

シャアやハマーンはカミーユと同じ年頃の時はカミーユとは違った形で屈折した境遇だったのが共通しているけど、シロッコがどういう青春時代を送っていたのかは個人的に気になったかな。
2011/08/30 (火) 18:08:21 | URL | #-[ 編集 ]
Zガンダムという作品が難しい と言われたりする原因なんでしょうね、カミーユって。
天才がゆえに理解しづらい という。

身近な感じが希薄で感情移入しづらい面もあるでしょうし。
2011/08/30 (火) 23:52:39 | URL | ふゃんねこ #Zog/ag.A[ 編集 ]
富野自身が出自的に一種のエリートなんですよね。父親(あるいは母親)が軍周辺で働く技術者という設定も富野自身の生育環境の反映だし、そういうなかで富野も戦後の窮乏期でもカメラを触っていたり、地元小田原では古い地主階級の家柄でブルジョアと言えます。エリート意識とコンプレックスがないまぜになった自我というのは富野永遠のテーマじゃないでしょうか。
2011/08/31 (水) 05:32:17 | URL | 名無しさん@ニュース2ちゃん #-[ 編集 ]
>ニュータイプが凄くても人の限界ってこんなもん

単に勘が鋭い半分エスパーとして描いたニュータイプを、
感性の鋭さゆえに脆い少年へと昇華させた発想はさすが富野監督ということなのかなと思いますね。

>機体性能を持て余す
失礼、これだとアムロの方が振り回されてることになっちゃいますね。
ご指摘ありがとうございます。

>カミーユは「主人公になったシャア」
これは確かにそうかもしれません。
両親を失ってティターンズが敵になるあたり、境遇もやや似ていますしね。
ティターンズに潜入してシャアのように裏で暗躍するカミーユも見たかったかも。

>エリートやブルジョワで括られるキャラクターが結構多い
ニュータイプが指導者になったらどうなるか、という発想が最初にあったのかもしれませんね。
アムロが軟禁された理由もそこからですし、そういう意味ではUCはその路線を引継いでますね。

シロッコは多分かなり無機的な育ち方をしているんじゃないかと思います。
どうも普通の生まれ方をしていないっぽいので…。

>ふゃんねこさん
感情移入しづらいというのは確かでしょうね。
アムロはある意味オタク的な少年としての自己投影ができましたが、
カミーユに自己投影できる人はあまり多くないでしょうし。

>名無しさん@ニュース2ちゃんさん
まさにそうですね。
仕事をしている母親、それに無関心な父親、その間である程度自由にしている息子というのが多くの作品の基本ですし。
ただガンダムの中ではZが一番先鋭的な形でそれが出てる感じですね。
2011/09/07 (水) 22:05:15 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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