がんだまぁBlog
ガンダムネタだけを語るブログです。
月初のガンダム以外の話「秋葉原無差別殺傷事件」
 今回はちょっとシリアスな話。この事件については、まだ覚えている人が多いと思います。秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込んで人を轢いたあげく、そのまま降りてバタフライナイフで近くにいた人間を無差別に殺傷したという、衝撃的な事件でした。

 当時の報道では、犯人がそのような事件を起こすに至った動機として、派遣されていた職場で仕事を打ち切られたと誤解して激怒していたという証言がクローズアップされていました。多くの人は、派遣という不安定な職業形態により生み出された事件だと思っていたのではないでしょうか。

 しかし、実際に行なわれている裁判の中で犯人=被告が証言した内容を見ると、事件に至った動機は(きっかけにはなっていたものの)本質的にはまったくもってそのようなことではなかった、ということが判明しました。ご存知の方は、いらっしゃるでしょうか。

 実は裁判の内容は普通に報道されています。

http://sankei.jp.msn.com/court/12696/crt12696-t.htm

 上記のURLを第16回あたりからずっと読み進めていくとわかるのですが、被告には社会で生きていく上で根本的に欠けている部分があることがわかります。彼は、「自分の意思を言葉で他人に伝えられない」のです。
 喧嘩をしている人がいて、それを不快に思ったときに、やめろと口でいうのではなく、両方を殴る事で無理矢理やめさせる、という行動をとったり、職場の上司が不快に思ったときに、それを言葉で伝えるのではなく、仕事を無断で辞めるという行為をとることで「アピール」する、という行動パターンを持っています。
 そのようになってしまった背景には、小さい頃から母親に自分の意思を全く聞き入れてもらえず、言われるがままになるしか生きる道がなかったという悲惨な生育環境があるようです。彼は、「自分の意見は言っても聞いてもらえない」ということを幼少時に強く学習してしまったのでしょう。

 また、あまりにも理不尽な理由で自分を否定される事が多かったがために、自分が他人から批判された時に、それを聞き入れるということもできなくなっていたようです。ただ「不快」という感情だけが残り、その感情を相手に伝えるために行動によって「アピール」していたというわけです。

 被告は、自分が不快な思いをした時に、それを相手にわかってもらうために「行動」を起こすという手段を身につけています。客観的に見てそれが到底相手に理解されそうにないと思えるような行動が多いのは、被告が行動を起こした事による「反撃」を避けるためなのではないかと思います。母親にアピールした時に、そのアピールそのものも潰されてしまうから、相手に直接わからないようにアピールするようになってしまった、のではないかと。

 もう一つ読み取れる特徴は、当面の目標を定めると、それ以外のことが見えなくなってしまうということです。会いたい人のところに行くために、仕事を辞めてしまう、というのが端的な例でしょうか。そして目標が達成(あるいは失敗)したことで一旦目標がなくなってしまうと、また次の目標を探しています。目標が見つからなくなると、被告は自殺を考えるようになります。しかし、実際に自殺を未遂でも行えた事はなかったようです。おそらく、本当に死にたかったわけではないのでしょう。ただ、目標を見失った時に、取るべき行動として彼は死ぬ事しか見出せなかった、のだと思います。
 何故そのようになったのかというのは、進学するというただ一つの目標のためだけに生かされていたからなのではないか、と思います。それ以外の選択肢を与えてもらえなかったが故に、一つの選択肢だけを選んで行動することしか身につけられなかったのではないか、と。

 「不快」を「行動」でしか表現できないことと、目標を定めるとそれ以外のことが見えなくなってしまう事。この2つが、事件を生み出した直接の要因だったことになります。そしてもう一つの副次的な要因が、インターネットです。
 被告は自分の居場所をインターネットに見出します。ネット上では、ネタ的な書き込みばかりをしていたようです。レスをもらえることに喜びを見出すタイプだったのでしょう。家庭でまともな会話をしたことがなかった被告は、名前や立場や容姿にとらわれず、ざっくばらんに会話を交わせるインターネットに魅力を感じていたように思います。
 しかし、インターネットでも人と人が交流する限りトラブルは発生します。被告が最も不快に感じたのが、自分に対する「なりすまし」を受けたときでした。匿名状態であっても、自分と相手が明らかに区別できる状態であれば相手に直接意思を伝える事が出来ますが、「なりすまし」は自分に成り代わって書き込んでいるだけで直接会話をする事が出来ないので、意思を伝える事が出来ません。IP等によりなりすましかどうか特定できる権限を持つ管理者への直談判も無視され、いよいよ不快な思いを相手に伝える事が出来なくなりました。
 インターネットがない時代であれば、このようなことは起こらなかったでしょう。他者と交流はできても、他者に物理的な行為を行う事が出来ない場所でなければ…被告はこのような結論を下す事はなかったのだと思います。

 被告は、実力行使が不可能なインターネット上の相手に対する「アピール」として、「事件」を起こすという行動に出たのです。それも、できるだけ大きい事件を起こし、犯人がその掲示板に書き込んだ人間であると特定できるように。

 常人には理解できない思考回路です。しかし、不快をアピールで表現するという行動パターン、次に取るべき行動を定めた時に他者のことを全く考えられなくなってしまう思考回路、そしてインターネットという居場所。この3つが重なって事件に繋がったということは、一応の説明になります。
 被告は必ずしもコミュニケーション能力が低いわけではありませんでした。男友達は少なくなかったようでしたし、職場でも孤立していたわけではなかったようです。また、罪の意識が希薄なわけでもありませんでした。借金を返さなかったり車を持ち逃げしたりする事に対しての後ろめたい感情は持っていたようです。しかし、致命的に欠けている点が、あったということです。

 また、もう一つ特徴を挙げるのであれば、不快な感情を抱いている状態では、その感情の解消を何よりも最優先に行う、ということでしょう。これはアピールによる解消であり、またその解消を行おうとしている時に後先を考えられなくなる、ということなのですが、それが事件を生み出した直接の衝動だったことになります。
 被告は母親への不満を、どこにもぶつけられずに育ったのではないかと思います。だからせめてそれ以外の不満については、どうにかして解消したいと思うようになったのではないでしょうか。

 そうして被告は事件を起こしました。しかし、おそらく彼の本当の意図である、「掲示板の人々に自分の不快さをアピールする」という行為は失敗しています。何故なら、それが動機であると事件当時報道されなかったからです。ただの、犯罪を予告して本当に実行したいかれた人間、としか認識されなかったでしょう。
 これについて、当時よく言われていた派遣切りと結び付けられてしまった事は一つの問題であるとは思いますが、当時のマスコミにそれ以上の情報はなかったと思いますので、それでマスコミを責めるのは筋違いかと思います。そもそも不快感を(伝わるはずのない)行動でアピールするという行動形式が根本的におかしいのであって、伝わらないのが当然、と言えます。

 これらの内容は全て弁護人の言葉によって導かれているものなので、もしかしたら被告の本当の動機ではないのかもしれません。しかし家庭環境や思考回路が事実なのであれば、事件に至った経緯は一応理論的には理解できます。
 そして理解した時、様々な事を思いました。マスコミの報道が誤認に基づくこともあること。政治的な風潮がそれを後押しするケースがあること。知らないだけで裁判ではかなり深いところまで事件の詳細を詰めていること。それがほとんど報道されないこと。そして、「自分の意思を上手に表現できない者」の極地がこの例であったということ、です。

 自分も、あまり言いたいことを上手く表現できる方ではありません。こんなにブログを書いておいて何を、と思われそうですが、文章ではともかく、口頭で意図を伝えるのは苦手な方です。どうしてそうなってしまったのか、と色々考えた事もあります。生まれ持った性格もあったろうし、親の育て方にも要因があるかもしれません。しかし、ここまで生きて思うことは、それよりも「自分の意図を伝えられない事は損」ということです。
 下手でもなんでも、自分が伝えたい事があるのなら、それは相手に伝えた方が良いのです。それをできなければ、結局苦しむのは自分なわけで。この事件の公判から感じた事は、まさにそれでした。

 一応ガンダムのブログなのでそっちに絡めるのであれば、ニュータイプだろうがオールドタイプだろうが自分の意図は伝えなきゃならんということでしょうか。ニュータイプは相手を理解できても、相手に自分を伝える事は、相手も同じニュータイプでなければ不可能なんです。それを、相手がニュータイプになってくれなきゃ、自分の気持ちはわかってもらえない、なんて考えてしまってはダメだということです。うん、なんかシャアってそんな人だったんじゃないかという気がしてきたぞ。だから人類全体をニュータイプにしたかったんじゃないだろうか。

 まぁともかく、自分が言いたいのは、どうしても伝えたいことがあるならそれはちゃんと伝えるべきだし、また子供がいるのであれば、その子供がどうしても伝えたいと思っていることは、ちゃんと汲み取ってやらなきゃいけないんじゃないか、ということなのです。そうすれば、この事件は起きなかったのですから。
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言葉とは虚しい物で、感情の100%は理解されない。
理解されるどころか、誤解さえ生む。

相手が思う赤と自分が思う赤は同じなのか?
人の数だけ赤は存在し、偶然出会った二人が同じ赤を持つ確率は低い。
だから人は苦悩し争う。

喋らないから、相手に伝わないのか?
母親は喋らない赤ん坊のことを100%理解する。
人を好きになったら「愛してる」と言葉に出さなくても、態度を見れば大体解る。

肝心なのは言葉ではなく、相手のことを思いやる心、隣人愛だ。
2010/09/09 (木) 09:56:15 | URL | カズラキー #-[ 編集 ]
パソコンや携帯電話の発達で、口語ではなく文字でコミュニケーションをすることが非常に増えました。当たり前ながら、口語より文字でのほうが感情や意見をわかりやすく簡潔に表すことができます。

そういう時代なら、人はメールやネット掲示板などの文字コミュニケーションに依存し、口での会話を「わかりずらい、わかってもらいにくい、面倒だ、難しい」というのも当然かも…被告もそうだったんでしょうか

そして、交互に理解しやすいはずの文字のコミュニケーションでも上手くいかなくなった時、現実世界で大きなトラブルや事件を起こしてしまう

ガンダムの方に話を持っていけば、宇宙世紀も100年近くなれば、今よりずっとずっと科学技術が発達しているでしょう。そこではより容易く、よりわかりやすい文字でのコミュニケーションが可能なのでしょう。

その世界では現代以上に、口語コミュニケーションは困難だと人々は感じるでしょう。ニュータイプも(発言の上では)抽象的な言葉が目立っていたように思えます(決して心で思ったことを十分に伝えられていない、という意味で)。
2010/09/10 (金) 09:46:28 | URL | NUU #-[ 編集 ]
>カズラキーさん
伝えても、相手がそれを受け止める気がないと伝わらない、ということは言えますね。
伝える勇気と、受け取る心というのはセットで必要だと思いますね。
伝えているのに伝わらない!って言ってる人は大体、他人の言葉を受け入れてなかったりしますから。

>NUUさん
被告の場合はパソコンをやるようになる前から伝える能力が欠損していたようですね。

人類全体がニュータイプになると口語文化が衰退するんじゃないか、と考えた事はあります。
富野監督自身が、自分を上手く他人に伝えられないタイプだったようですね。
だからこそニュータイプという発想が出来たのではないかとも思います。
2010/09/11 (土) 00:02:52 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
派遣切りされようが、インターネットで人間関係のトラブルに見舞われようがなんだろうが、普通の人は殺人に結びつくようなことはしません。
派遣切りされても、インターネットで人間ガン系のトラブルに見舞われようと、普通に頑張って生きている人はいっぱいいますよ。
加藤被告が殺人理由は、京極夏彦の作品から引用すると「通りものにあたった」としか考えられないんですよね。
犯罪なんてものは通りものが過ぎるか過ぎないかで決定するんじゃないのかなと。
そこに動機や理由なんてものを結びつけること自体がナンセンスだと僕は思います。
結局、動機や理由なんてものは世間様を納得させるためのものでしかないのだから。
判決で重要視されるのはその罪の重さなのだから、理由や動機を引っ張ってきたって無意味だと思うんですけどね・・・。
2010/09/13 (月) 10:33:04 | URL | トーリ・スガリーノ #-[ 編集 ]
本当自分の気持ちを伝えないのは ただただ損だし 不満や苛立ちが時には募るだけになってしまう

劣悪な家庭環境で育ってしまったら
そういう考えにも至らなくなってしまうんですね
おそろしい
2010/09/14 (火) 01:17:25 | URL | ロウ #-[ 編集 ]
>トーリ・スガリーノさん
普通の人間は殺人などしないからこそ、普通でない人間はどこが違うのか、というのは考える必要があるのだと思いますけどね。
普通の人間にあるはずのものが欠けているからこそ罪を犯すのであれば、
その欠けているものを欠かさないよう働きかける事で、
犯罪者予備軍の人間を立ち直らせることだってできるかもしれないわけですから。

>ロウさん
幼少時から成長していく中で学習してしまった行動パターンというのは、大人になってもそう簡単には直らないみたいですね。
頭でわかっていても感情が従わない、みたいなのはその人が根っから持っている個性で、
それが歪んでしまうと順調な人生を歩むのは難しいような気がします。
2010/09/14 (火) 22:01:34 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
>ルロイさん
>普通の人間は殺人などしないからこそ、普通でない人間はどこが違うのか、というのは考える必要があるのだと思いますけどね。

心理学とかだとそういうのを研究したりします。
まあ死刑に相当する凶悪な犯罪をする人間ってのはあまり多くないのであるいみ貴重な研究対象だったりします。
まあヤクザとかあるいみ職業的に犯罪を犯す人間とかは除いたうえですが。
そしてそれを理由に死刑に反対する科学者もいます。
まあ身も蓋もないいいかたをすれば「貴重な研究対象を廃棄するな」ってことですが。
2010/09/16 (木) 20:57:54 | URL | DN #mQop/nM.[ 編集 ]
あー、そういう理由で死刑に反対する人もいるんですね。
基本的に思想信条だけで反対してるんだと思ってました。
わからんでもないですけど、刑務所で面倒見る人も大変なんでしょうね…。
2010/09/18 (土) 21:13:56 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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