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アムロは何故「危険分子」とみなされたのか
 アムロは一年戦争後、危険分子とみなされ軟禁状態にあった…というのは、Zガンダムのストーリーにおいても主要なファクターの一つです。
 しかし、そのアムロが何故そこまで危険分子とみなされたのか、作中に明確な説明はありませんでした。

 そのことについて、最も詳細に説明しているのは、おそらくは小説版2巻のこの文章でしょう。

 ニュータイプは、危険分子かもしれない。『ニュータイプが、その能力を発揮して、軍と政治のトップに食い込んだら、ニュータイプでない人々はどうなるのか?』その単純な不安が、一般の軍人と政治家の間にニュータイプを排除すべしという結論を生んだ。(p161)

 この説明は、ある意味では理解できますが、別の意味では理解し難いものがあります。というのも、確かにニュータイプが軍や政治に関わったらオールドタイプを上回る結果を生み出せるかも知れませんが、一方で我々の知るアムロ・レイというキャラクターは、とても軍や政治のトップに食い込んでいくような人間ではないからです。
 アムロが政治家になったり、軍閥の一員として権力闘争に参加するということは到底想像できません。そもそもアムロは、確かに高い戦果を挙げたエースパイロットとなりましたが、まともな軍の教育も受けていない民間人の少年であることに変わりはありません。コネも野心もない普通の一般市民なのです。だから、とてもそれが危険分子とみなされ幽閉に至るほどの要素とは思えないのです。

 …が、その考えは、一年戦争直後のアムロの身分というものを考えると、改める必要があります。

 終戦時、アムロの身分は「軍人」でした。ジャブローで制式に任官されており、ガンダム2号機の正規のパイロットとして登録されています。つまり、アムロのその後の選択肢は「除隊して民間人に戻る」か「軍人としての生活を続ける」かの二択しかありません。
 しかし、アムロは父を失っており(生きてるかもしれんけど一緒に暮らせる状態ではない)、母の元に戻る気もなく、軍を辞めても身寄りのない状態でした。そして何より、アムロは一年戦争の英雄として祭り上げられており、連邦軍としてはアムロにはまだ軍人でいて欲しい、と思っていたはずです。戦勝国の象徴として。

 というわけで、アムロは軍に居続ける事になります。が、ホワイトベースのクルーが解散したとして、その後アムロを受け入れてくれる部隊があったでしょうか。
 アムロは最高のパイロット能力と、その能力を手にするに見合うだけの死線を潜り抜けてきた最強の兵士です。少年であっても、連邦軍の「MSパイロット」としての実績はベテランレベルと言えます。なんせジムがまともに配備される前からシャアとドンパチやってた人間ですから。
 一方で、「軍人としてのまともな教育を受けていない」上に「人生経験も未熟である」ということにも変わりがありません。
 人間として未熟であり、軍の常識も全く備わっていないにも関わらず、最高の実力と実績を兼ね備えている…こんな少年と一緒に仕事をしたいまともな大人の軍人がいるだろうか、という話です。
 中にはバニング大尉的な懐の広いオッサンがいるかもしれませんが、そもそも戦後のアムロはそのバニングと同階級なわけで、ポジション的にはアムロは佐官の下に付く部隊指揮官クラスの身分ということになります。つまり、アムロの上に立つ軍人というのはバニング大尉的な叩き上げ軍人ではなく、エリートの艦長クラスだったりするわけです。銀英伝のごとく嫌われるのは目に見えています。

 つまり、軍人としてのアムロは、あまりにも身分不相応に昇進コースを一気に駆け上ってしまったことになるのです。それもコネなしの実力のみで、ですから、コネばかりで実力は大したことないエリート軍人にとっては脅威になったに違いありません。
 アムロのすぐ上にいる軍人としては、「できるだけ閑職に回して、しばらく自分達とは遠ざけておきたい…」と思うのは当然でしょう。これが、アムロが軍人として危険分子とみなされた理由です。
 なんというか、図らずとも軍においてアムロが一年戦争当時のシャアのような位置になっているのが面白いですね。アムロがシャア並に野心を持っていたのであれば、そこで上手く立ち回れたのかもしれませんが、アムロはもとより「望んでもいないのにシャアと同じラインに立っている」というキャラなのかもしれません。

 さて、軍人としての理由はイメージできましたが、政治家として危険分子とみなされた理由、というのはどうでしょうか。

 そもそもアムロは軍人であり、政治家になる可能性は極めてゼロに近いと言えます。「軍人として実績を積んだ上で退役して政治家になる」か、「すぐに退役して戦後の人気を生かして立候補する」かしかなく、そもそも当時のアムロは年齢的に被選挙権もなさそうな気がします(もちろん宇宙世紀の地球連邦の憲法での参政権がどうなっているかはわからないですけどね)。
 ただし、アムロは「ニュータイプの象徴」という扱いを受けました。そもそものニュータイプ論というものがジオン・ダイクンによって生み出されたことを考えると、アムロはまさに「ジオン・ダイクンの思想を体現した存在」であるということになるのです。
 つまり、アムロは(本人の意思に関わらず)実の息子であるシャア以上に「ジオン・ダイクンの後継者」となり得る要素を持っているということになります。本人がそう思っていなくとも、周囲の人間…特にダイクン派の人間がそう思っていた可能性は高いでしょう。

 結論から言うと、アムロ本人の性格や気持ちに関わらず、アムロ・レイという人間は政治利用されてしまう可能性を多大に秘めていたということです。
 本人の気づかぬうちに祭り上げられ、意図せず広告塔として使用されてしまう、なんていうことはスポーツ選手や芸能人にもありがちなことですし、実際にアムロはその影響力を連邦軍に利用されていた側面があります。連邦軍が、アムロの商品価値を更に高めてしまったとも言えます。
 もしかしたら、アムロに対して反政府系スペースノイドの団体などがアプローチをかけていたのかもしれません。そういうものから遠ざけるために、政府の人間が軟禁という選択肢を取った、という可能性も考えられます。
 実際に、アムロが参加した後のカラバは、その存在を大々的にアピールして世論に正当性を訴えていたようですしね。そうさせないための軟禁だったと。

 このように考えると、確かにアムロは危険分子だったと言うことができます。彼は軍人としても、著名人としても、器以上の実績を備えてしまった人物だったと言うことができるでしょう。

 そう考えると、他のホワイトベースのクルーも同様に、反政府系組織からのアプローチがあった可能性もありますね。
 そして真面目なハヤトは素直に彼らの言う事を信じてカラバに身を投じ、ひねくれ者のカイは自分の目で確かめないと信じないとジャーナリストになり、過去を忘れたいセイラは勘弁してくれと隠遁生活に入る…と彼らのその後となかなか辻褄が合っています。ブライト夫妻は家庭を持って無難な暮らしを選んでいたのだと思うのですが、ブライトはティターンズの現実を内部で見てしまったのでいてもたってもいられなくなった、という感じでしょうね。
 ただ、積極的に(指揮官クラスで!)活動に参加したのがハヤトとブライトという、家庭を持って一番落ち着いていそうな男2人だったということを考えると、エゥーゴやカラバといった組織が彼らに参加を求めた際の条件として、「家族の絶対の安全」を約束していたのかも知れませんね。我々のネットワークで必ず何とかすると。その割にフラウの処遇はアムロに丸投げだったり、ミライは誘拐されてたりと全然安全が保障されていたようには見えませんが(笑)。

 以前、「元ホワイトベース隊は何故反組織に参加したか」を考えたことがありましたが、本人の意思どうこうよりも、外からの働きかけというのが多分にあったのだろうなという気がしました。もちろん、一年戦争後の彼らは安定しながらも一線から外された世界に隔離されていたことから、「このままではいけない」という意識が醸成されていたこともあると思いますけどね。
 そういう意味では、もっと元ホワイトベースのクルーの皆さんが「戦後大きな制約を加えられて、自由に動けなくなった」という部分を強調して、「エゥーゴが彼らを救い出す」という展開にした方がわかりやすかったのかな、という気がしました。みんな自発的に活動に参加してるからなぁ。
 ある意味、かつて成り行きで戦わざるを得なかったホワイトベースの元クルー達が、自らの意志で戦いを選ぶ物語がZガンダムであったとも言うことができるのですが、それがスペースノイドの権利向上を訴える運動への参加であったということにどうにも解せないものがあります。OOにおけるアロウズとカタロンの関係のように、単純に組織の暴走に立ち向かう組織への参加とした方がもう少し視聴者の腑に落ちたのかなと思います。なまじ人種対立や主義思想の対立を持ち出してしまったためにわかりにくくなってしまった気がしますね。
 逆に、もし純粋にエゥーゴとティターンズがスペースノイドとアースノイドの戦いだったとするのであれば、それこそSEEDの連合とザフトのように、完全に同一民族からなる組織同士とすべきだったのだと思います。が、カミーユもアムロも地球生まれっぽいですし、その他の多くのキャラにも純粋にスペースノイドなのかどうか、などの説明がないわけで、結局は民族対立ではなく主義と利害の対立だったことになるわけです。

 政治的な要素を取り去った場合、グリプス戦役は地球と宇宙の対立ではなく、単純に権力の暴走とそれを食い止めようとする者の戦いだったと言え、ホワイトベースの元クルー達は、互いのカードになり得る存在だったとさえ言うことができます。いっそのこと元クルー同士が敵味方に分かれるような展開も面白かったのかも知れませんね。
 IFの話ばかりしてしまっていますが、せめてアムロたちがそれだけ影響力の高い存在であるということは、もう少し作中で強調しても良かったのかなという気がします。ブライトがアーガマの艦長になったということにも、本当はもっと大きな意味があったのかもしれません。
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コメント
小説にはアムロがマスコミに独自の「ニュータイプ観」みたいなものを話していた(逆にこれはマスコミがアムロからとうざかるきっかけになってしまいましたが)って言うエピソードがこれまた小説にありました(違ったらスイマセン
そもそも、反乱以前にNTを肯定したくない連邦にとっては邪魔だったから、世間にそのアムロのNT観が(受け入れられても、受け入れられなくても)ひろまってしまうのを防ぐために手っ取り早い方法で閉職へ・・・・・・みたいに、NTの概念を広めない為(アングラでは広まって多様ですが)の措置、と考えてみたり。

連邦も広告塔として利用したかったでしょうが戦後の連邦にはそんな度量もなければ勇気もなかったでしょうし。
・・・・・・このネタ、考えれば考えるほど連邦が悪く見えてきますねw
2009/02/18 (水) 17:55:10 | URL | クレア #I4t1ZHtI[ 編集 ]
確かにありましたね。アムロのニュータイプ論が抽象的過ぎて理解されず、マスコミにも取り上げられなくなったってやつですね。
そのせいで、連邦がアムロのジオン・ダイクン化を恐れたのかな、とも思います。

アムロは持ち上げすぎると、その他の将兵の価値を下げてしまうということもあると思うので、
いずれにしてもアムロを表に出すことには限界があったようにも思います。
連邦内部にアムロの味方がいればもう少し扱いも違ったんでしょうけど、ね。
2009/02/18 (水) 23:46:56 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
ルロイさん凄いです!
>連邦内部にアムロの味方がいればもう少し扱いも違ったんでしょうけど、ね。

つまりは、これに尽きるんじゃないかと。
レビルは死にました。ホワイトベースに目をかけていた重鎮は基本的に彼だけでした。
あとは派閥みたいな話じゃないですかね。ホワイトベース・クルーは自動的にレビル派に組み込まれてしまっていたのかと思います。
2009/02/19 (木) 00:34:09 | URL | R.M #-[ 編集 ]
器以前に
そもそも、WBクルーもシャアも、みなさん能力以前に望むものが小市民どまりであるように思います。
英雄になりたいわけでも、リーダーとして多数を救いたいわけでもないんですよね。
そういう人たちが世界レベルで英雄視される立場に行ってしまったことが全員の不幸の元なのかも。

レビルやパオロが生きていれば、WBクルーもうまく安穏な戦後を生き切れたのかも。それじゃ血沸き肉踊る物語にはなりませんが^^;
2009/02/19 (木) 01:19:26 | URL | ナタル #.ZWFf9ps[ 編集 ]
>R.Mさん
確かに、せめてウッディでも生きていれば…というところですね。
テムの同僚とかっていなかったんでしょうかね。社交性なさそうだし、いたとしても技術士官じゃどうにもならないかもしれませんが。

レビルが死んだ戦後に台頭してきたのがジーン・コリニーでありジャミトフだったことを考えると、
ホワイトベースのクルーの扱いの変化というのにも意味を見出せそうですね。

>ナタルさん
確かに仰る通りです。みんな普通の一般人に戻りたかったのかも知れませんね。
それはカミーユも同じはずであり、そのあたりを共通点として描けばもう少し一貫した物語になったような気もします。
普通の暮らしを手に入れたハヤトも活動に参加してるあたり、
彼もアムロ同様監視下にあったのかもしれませんねぇ。
2009/02/20 (金) 22:19:21 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
中央政府って言う所は……
アムロをここまで危険視した理由としてはやはり敗戦濃厚になったジオン公国のNT研究関係者が身の保身(家族の含めて)の為に連邦に資料を極秘に提出、その中に似たようなデータがアムロにも出ていたら科学的な検証とか待たずに連邦政府の中枢は警戒したかもしれませんね。


 逆にこの手の人材活用に上手かったのがオーブ……何しろアスランやらキラにその他のAAクルーが普通に生活出来ていたからね……(まあ、ザフトの特殊部隊襲撃を許したあたりは少し疑問ですが)

 あとアロウズもMr.ブシドーにライセンス与えた辺りはカタロンの様な反政府活動参加防止かもしれません(最もあのエキセントリックな性格だとそうなる可能性も低いと思えますが)
2009/02/21 (土) 07:56:08 | URL | YF-19k(kyousuke) #vOF08ZPo[ 編集 ]
Zでの連邦とSEEDでのオーブの最大の違いは、やっぱりトップの人間と繋がりがあるかないかですね。
宇宙世紀の連邦にはカガリみたいなお姫様はいませんからねぇ…(笑)
2009/02/21 (土) 16:16:17 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
>IFの話ばかりしてしまっていますが、せめてアムロたちがそれだけ影響力の高い存在であるということは、もう少し作中で強調しても良かったのかなという気がします。ブライトがアーガマの艦長になったということにも、本当はもっと大きな意味があったのかもしれません。

アムロは一年戦争の英雄として一般市民にも相当な認知度だったけど、ブライトはカミーユがかつてのホワイトベースの艦長としてサインを貰った辺り、アムロ程じゃないにせよ結構知名度はあった感じですかね(逆に疎んだ軍人も多かったと思われますが)。

戦後の僅かな間だけホワイトベース隊ブームなんてのがあったりして…
2009/10/13 (火) 19:26:43 | URL | #-[ 編集 ]
小説版Zを見る限りでは、一時期はかなりマスコミをにぎわせていたようですね。
ハヤトとフラウの結婚も大きく取り上げられていたみたいですし。
そんな中でブライトを一番に見ていたカミーユは周囲から浮いてたんじゃないかなぁなんて思ったり…。
2009/10/13 (火) 23:17:32 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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