がんだまぁBlog
ガンダムネタだけを語るブログです。
月初のガンダム以外の話「安彦氏の自伝、『原点 THE ORIGIN-戦争を描く、人間を描く』」
 富野監督の自伝は昔からよく読んでいましたが、割と最近安彦良和氏の自伝が出たので、読んでみました。ガンダムのエピソードというよりも、学生運動にまつわる政治的な話の方がメインなので、ガンダム以外の話とします。個人的にはこのテーマも気になっていました。富野監督は学生運動に一時的に参加しながらも、すぐに合わないとドロップアウトした側ですが、安彦氏はガチガチに活動していた側ということなので、当時がどのような感じだったのかというのも興味がありました。


 書評の前に、自分が学生運動についてどう思っているか記しておこうと思います。ツイッターをフォローして下さっている方ならご存知かとは思いますが、基本的に否定的に見ています。
 初めて学生運動というものの存在を知ったのは、大学に入学したときですね。それこそ当時の活動を未だに続けているような団体の看板を見て、非常に驚いたものでした。当時の総理大臣は小泉純一郎氏でしたが、彼をヒトラー呼ばわりし、やっつけようと過激な言葉を書き連ねてあるのを見て、非常に強い違和感を感じたものです。そもそも大学内でなんでこんなこと許されてるのかというのもそうですし、そもそもヒトラーがどういう人物か知ってて書いてるのかなと。別に当時の小泉総理を全面的に支持していたわけでもないですが、ヒトラーと比べるには色々な要素が違いすぎて双方に失礼だろうと。今でも安倍総理をヒトラー呼ばわりしてたりするので、基本的にただのレッテルなんだろうなぁとは思いますが、そういう間違った前提を自分たちで勝手に掲げて叩く材料にしているマッチポンプ感が、「こいつらを信用しちゃ絶対にいかんな」と自分に確信させました。
 こんな胡散臭いものが何故はびこっているのか、授業前に教室にチラシ配ったりしてるし、新聞等のマスコミでも同じようなことを言っている人がいるし、一体何なんだと、とても疑問に思っていました。そして学生運動というものが昔あったということも知ったわけですが、そこまで大きなムーブメントになった意味がわかりませんでした。これただのカルトでしょ、と思いましたし。
 このことについては、やっぱり当時の人間ではないので、未だによくわからないんですよね。なんとなく、戦時中の軍国教育の反動なのかなというイメージはあるんですが、この現代に同じような活動をしている人はあまりにも思考が硬直化しているので、参考にならないというのもあります。そういう意味で、もっとフラットな目線でドライに語ってくれる安彦氏の物の見方を知ってみたい、と思いました。その目的は、ほぼ達成できたと思っています。

 結論から言うと、一つ言えるのは戦後の教育者の存在が大きかったんだろうなということです。軍国教育の反省があって、当時の日本の教育界は過剰なまでに反戦思想、平和教育を徹底しすぎたのかなというのが読んでいてわかりました。もちろん、教師の誰もがそうだったというわけではないんでしょうけど、今の日教組なんかよりもずっと過激な思想を生徒に熱心に植え付けていた教師が多くいたのは間違いないのかなと。誰もがその影響を受けたということもないんでしょうけど、一部の強く影響を受けた生徒が、実際に大学生にまでなったときに、世の中があまりにも学校で教わった話とは違う方向に向かっていることに気づいて、それはおかしいと思うようになったという感じですね。
 つまり、戦争はだめだ、日本は絶対にもう参加しちゃいけないと教えられていたのに、今の政権は基地を貸したり自衛隊を作って戦争をやってるアメリカに協力しているじゃないか、これは政府の方が間違っている、だから正さないと、と真面目な学生ほど考えてしまったんだろうなということです。前提となる教育がやや過激であったが故に、世の中の流れ(特にアメリカ追従の動き)に強い抵抗感を感じてしまったんだろうなと。
 GHQは当初、日本を完全に非戦の国にしようとして共産党の活動も奨励していたものの、朝鮮戦争が始まり日本列島が「東側」に対する最終防衛ラインになったことにより立場を180度変えた、ということは聞いたことがあります。しかし最初の方針のまま教育界は政治から切り離されていたために、その方針転換の煽りを受けることなく反戦教育を貫いてしまったことが当時の子供たちを間違った方向に進めてしまったんじゃないかなぁ、となんとなく想像しました。
 もう一つは、この手の反戦活動というのは、基本的に「情弱を騙す」というやり方で同調者を増やしていく傾向があるということですね。ネットどころかテレビもなかった時代に、北のはずれの田舎の地域で歪んだ情報を与えられても、それが真実かどうか判断することもできず、ただ鵜呑みにするしかなったので、結果的に運動の言い分を信じてしまうということなのかなと思います。未だに、地方の新聞は基本的に左翼的ですし、国会のデモなんかに動員されている人たちの多くは、とても都心に住んでいるとは思えないお年寄りであるというのも実際に見たことがあります。真実から遠い場所にいる人間に意図的に歪めた情報を伝えて怒らせて活動に参加させる、というやり口なんだなというのは読んでいてよくわかりました。沖縄の問題なんかもそうですよね。これが沖縄の声だ!ってしたり顔で代弁してますけど、本当にそうなのか都心にいたらわからないですし。

 安彦氏も北海道の僻地で反戦教育を受け、それと全く違う方向に進む政府に憤慨して学生運動に没頭するのですが、一方でメジャーな運動のやり方では一般人を巻き込めない、ということも早い段階から察知していたのは流石かなと思います。あくまでも普通の人にわかる言葉で、冷静な態度で自分たちの思想を伝えようと試みて、そのせいでいつの間にか運動の代表者と扱われるようになり、最終的に処罰されてしまうというのはちょっと悲劇的です。ただ、その過程がなければ彼がガンダムの作画監督になることはなかったのですが。
 おそらく、当時そう思っていた人はたくさんいたんだろうなと思います。理屈では賛同していても、手段がおかしい、このやり方で本当に政治を変えることができるのか、というのはまさにその通りで、実際この活動の目的は本当は政治を変える=革命を起こすことではなくて賛同者を増やすことなんですよね。カルト宗教とかマルチ商法みたいなもので、立派な目的があるようで、本当は組織の上部にいる人間の食い扶持のために参加者を増やしているだけに過ぎないという。だから反戦運動が下火になってからは、同じような人々が今度は環境問題で同じような活動を進めていましたし、今は反原発活動がメインになってますよね。彼らは本当は運動が出来れば内容はなんでもいいんです。それを当時の人々でも看破していたと分かったのは収穫でした。

 もう一つ感じたのは、そんな「おかしい」と思っている人が内部にいても大学封鎖などの過激な活動を実行せざるを得なかったというところですね。安彦氏の言葉によると、一度決めてしまったのでやるしなかった、やめるという選択肢はなかったということで、それではまるで戦争に突入して敗色濃厚になっても原爆落とされるまで止められなかった旧日本軍と全く一緒だなと感じました。基本的に、日本人はそういう民族なのかなぁと思います。みんなでやると一度決めたら、「やっぱり間違ってたのでやめます」は通じないという。まぁ東京五輪エンブレムとか築地市場はひっくり返せたので少しは変わってきたのかなと思いますが(笑)、一度決まったことは「同調圧力」によって変えられなくなるというのが日本人の悪い習性で、変えていかなきゃいけないところなんだろうなと思います。逆に言えば、学生運動が広まったのも、「組織をつくり」「組織の上部が決定した」ことによって、簡単に覆せなくなってしまったというところなのかなと思います。組織化することの弊害ですかね。だから個々に色々と政治的に思うことがあっても、迂闊に変な会に入ってしまうと抜けられなくなって面倒になるんだろうなと思います。実際にそういう組織に属してしまった人を見ると、色々と義務を課せられて大変そうですから。そういうところがカルト宗教と同質なのでしょう。


 さて、もちろんガンダムの話もありました。その中で一つ個人的に新しい見識を得たのが、「ガンダムは冷戦時代を反映した話でもあった」ということです。ファーストガンダムは、どちらかというと第二次世界大戦の世界観をベースとしていて、ジオン軍=ドイツ軍の図式で語られることが多いわけですが、冷戦時代の当時は、「核戦争後、世界が壊滅した後の物語」が非常に多かったという話から、ガンダムも「総人口の半分が死滅した後の物語」という意味で同じだったという説明があって、なるほどと思いました。個人的に一番有名だと思うのは北斗の拳の「199X年、世界は核の炎に包まれた!」だと思うのですが、この手のモチーフは確かに80年代を中心に非常にたくさんあったんですよね。初期の宮崎駿作品もだいたいこのモチーフですし。
 いずれ核戦争が来るかもしれない、という予感が世界中にあって、そうなった後の世界というのがファンタジーとして使いやすかったんだと思うのですが、ガンダムも確かに言われてみればそうだなと。個人的に、ガンダムの総人口の半分が死滅したというくだりが物語上何故必要なのか疑問に思うことがあったのですが、当時の空気としてそういう世界観が当たり前だったのだなと知ると、納得がいくようになりました。
 これまで、ファーストガンダム=第二次世界大戦、Zガンダム=戦後の世界という理解でいたのですが、必ずしもそうではなくて、むしろZ以降の宇宙世紀は冷戦終結後の世界と理解してもいいんだなと思うようになりました。これもこの本の収穫の一つです。

 もう一つは、安彦氏のファーストガンダムへの思いですね。彼はファーストガンダムには相当な思い入れを持っています。ジ・オリジンを描いたんだからそうなんだろうなとは思いますが、かなり早い段階で「この作品はイケる」と確信していたようです。もちろん原作者が富野監督であることは前提として、その彼のプランに全面的に賛同したというのが非常に良く分かる語り口になっていました。それは子供向けにデフォルメした世界ではなく、自分がやりたい物語や世界をファンタジーに仮託して描けるという点にあったようで、それは確かに富野監督の方向性と一緒なので、2人のやりたいことが合致した結果なんだろうなというのが良く分かりました。
 ただファーストで全て出し尽くしているので、それ以降のガンダムには全く興味がなかったようで、そこがビジネスとしてその後の仕事をした富野監督と自分の違いだとも述懐していました。Zの初期キャラデザインやF91、ユニコーンのキャラデザインも完全に仕事でやっただけで、思い入れはなさそうです。Gレコみたいな世界観を安彦氏も一緒に真剣に描いてくれたら割とすごいものになりそうな気もするんですけどね。

 今の時代は、Gレコで富野監督が描いたように、戦争を肯定する人たちも否定する側の人たちも、戦争当時の教訓とか記憶をないがしろにしている部分があって、どっちも馬鹿なんじゃないの?と思うことがしばしばある世界だったりします。そういう時に、思想に傾倒していない当時の世代の言葉を聴くのは結構大事なんだろうな、と思ったりしました。

 なお書評という意味では、この書籍の作りは安彦氏のエッセイと、著者自身のエッセイが交互に掲載されているのですが、著者のエッセイの方は割と読むのが苦痛でした。序盤は過剰な安彦氏ヨイショ、後半は露骨な自民・安倍叩きが垣間見えるので。まぁ、ガンダム以後、ジ・オリジン以前の安彦氏の仕事が丁寧に解説されているのは良かったのですが、それ以外は…。安彦氏の言葉だけが読みたかったですね。新聞に掲載されたエッセイの再編集なので仕方ない部分ではありますが。
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ごめんなさい気が立っています
一言でいうとオールドタイプの安彦良和はニュータイプ論を持ち込んだ富野由悠季が嫌で抜けたんだろう?今更なんだ!
俺がガンダーか?散々私的たんだよ視な!ターンエーで全肯否定しやっとGレコで元気になった御大を発狂させる気か
2017/07/11 (火) 21:43:30 | URL | カズラキー #-[ 編集 ]
決して安彦氏はニュータイプ論を否定してはいないですよ。
ただ現実にニュータイプが存在して、それを目指すべきという考え方には否定的だったかもしれませんが。
まぁファーストガンダムで描きたかった世界が富野監督とは微妙に違ったのは確かで、それを互いに理解しているのであまり干渉せず大人の付き合いをしていると理解しています。
だから富野監督が今更安彦氏に腹を立てるということもないでしょうし、逆もまたないと思います。一緒に仕事をさせたらどうなるかはわかりませんけどね。
2017/07/14 (金) 22:35:28 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
二人の間のニュータイプ論の解釈の違いほか
G20かガンダムエース系の大分前の話で安彦氏はニュータイプは世代論のつもりだったが、富野氏がララァを書き上げてきて(ヒッピー文化系が崇拝するインド系の話に富野監督がかぶれているのではないかという危うさを感じ?)、そうではないよなと富野氏に念押ししたという当時から方向性の若干の違いがあった話を見た記憶があります。
また、ぬえ出身者の「宇宙の戦士」情報を元に富野監督が企画書を作り上げたという話は結構知られていると思いますが、某有名巨大掲示板にもう一つ70~80年代の仮想第三次世界大戦本がタネ本という話が有りました。本の名前を忘れてしまったのが残念です。もしこれが事実なら構成の星山さんがその種本を採用した決定者なのか気になります。
2017/07/23 (日) 06:24:15 | URL | ・・・ #-[ 編集 ]
そうですね、安彦氏はニュータイプを世代論と捉えていたというのは自分も見たことがあります。
それに対し当時の富野監督は人類の(決してたどり着けない)理想形という意味合いで考えていたのかなという気がします。

仮想第三次世界大戦本が参考になっているというのは初耳ですね。やっぱりWW2をなぞっているというよりはその先の世界観を想定していたんだなと納得は出来ますが。
2017/07/27 (木) 20:54:25 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
うーん、やっぱりガノタってなんとなく右派になっちゃってるんだなあという感想
安彦良和氏を「過激な反戦教育に影響されて…」などと簡単に切り捨てる前に氏がFUTUREWAR198X年に向けたコメントとか調べてみるとよいですよ
2017/10/15 (日) 18:20:21 | URL | とあるガノタ #-[ 編集 ]
右か左かの話で言うと、安彦氏の考え方を批判しているのではなく、安彦氏は左の限界を悟って違う可能性を模索しているけど、どうしても左寄りの教育が邪魔をしてしまっている、ということが言いたいので、批判したいのは左寄りの教育思想だけですよ。
左を批判したら右寄り、という考え方では理解していただけないかもしれませんが…。
2017/10/21 (土) 23:35:21 | URL | ルロイ #-[ 編集 ]
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